2013 Fiscal Year Research-status Report
糸状菌セルロース誘導制御因子 ClbR の作用機序解析
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25450110
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
谷 修治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80405357)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Aspergillus aculeatus / セルロース系バイオマス分解酵素遺伝子 / 発現制御 / ClbR / セルロース誘導 |
Research Abstract |
我々は、糸状菌 Aspergillus aculeatus におけるセルロース系バイオマス分解酵素遺伝子の発現制御機構を分子レベルで解明することを目的としている。本課題では、(1) セルロースやセロビオースに応答して遺伝子の発現を誘導する新規転写活性化因子 cellobiose response regulator (ClbR) の作用機序を解明することを目的として、ClbRの相互作用因子の探索と機能解析、また(2) 新たなセルラーゼ遺伝子発現制御因子を同定することを目的として、新規制御因子のスクリーニング・同定・機能解析 を課題として設定した。 これまでに我々は、clbR高発現株における各種糖質加水分解酵素の生産量や各種酵素遺伝子の発現量解析から、ClbR が他の制御因子と協調的に遺伝子の発現を制御していると着想するに至った。本仮説を検証するために、(1) の解析において Yeast two hybrid法を用いてClbRの相互作用因子を探索した。結果、ClbRと42%の相同性を有す転写活性化因子(ClbR2と命名)を同定し、clbR2の遺伝子破壊株を作出してその機能を解析した。また(2)の解析においては、我々が構築したセルロース誘導制御因子のポジティブスクリーニング系を用いて生産調節因子をスクリーニングした結果、新たにセルロースに応答した遺伝子発現誘導の初期を正に制御する因子を同定した。この因子は、酵素活性を有すタンパク質と相同な因子であるが、これまでに真菌類で遺伝子の発現制御に関与している事が知られていないことから、間接的な影響も含めて今後詳細に機能を解析する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) ClbRの相互作用因子の探索と機能解析 我々は、ClbRの相互作用因子としてClbRのパラログ因子ClbR2をYeast two hybrid法を用いて同定した。ClbRとClbR2の単独・二重遺伝子破壊株を用いた解析より、ClbRとClbR2はセルラーゼ遺伝子だけでなく、それらの発現を正に制御する転写因子ManR遺伝子の発現も協調的に制御していることを明らかにした事から、おおむね順調に研究が進展していると考える。また、ClbRと相同性を有すパラログ因子は、A. aculeatusゲノム上に計3つコードされていた。これは同属の糸状菌では保存されているが、他綱に属すTrichodermaやNeurospora等のゲノム上にはホモログ因子が一つしかない。糖質加水分解酵素遺伝子の数はAspergillus 属の方がより多いことから、転写因子の重複と変異により、Aspergillus属がより多くの遺伝子の発現を制御するための機構を獲得したものと推測された。 (2) 新たなセルラーゼ遺伝子発現制御因子のスクリーニング・同定・機能解析 我々はA. aculeatus T-DNA挿入変異株ライブラリーを構築し、その中からセルロース誘導を制御する因子をポジティブにスクリーニングする系を構築した。我々は複数株のセルロース誘導能欠損株を同定しており、これまでに転写因子など遺伝子発現制御因子と相同性を有していない酵素活性を有す因子を新たな制御因子として同定することに成功した。本因子の遺伝子破壊株を改めて作出して解析したところ、本因子はセルロース・セロビオース誘導の初期課程を正に制御する因子であることが示唆された。現在、本因子の酵素活性を解析するとともに、作用機序の解明に向けて研究を展開している。また、同時にその他の変異株の解析も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ClbRの相互作用因子の探索と機能解析 ClbRとClbR2の相互作用ドメイン解析を行うとともに、各タンパク質のDNAへの結合特性解析を行う。これまでの予備的な実験により、MalE融合ClbRリコンビナントタンパク質とMalE融合ClbR2リコンビナントタンパク質は、遺伝学的相互作用の観察されたmanR遺伝子プロモーター領域にin vitroにおいて協調的に結合する一方で、xynIa遺伝子プロモーターにはMalE::ClbRリコンビナントタンパク質のみが単独で結合することがelectrophoresis mobility shift assay法により示唆された。今後はクロマチン免疫沈降法を用いてin vivoにおける両タンパク質の結合特性について解析する。 (2) 新たなセルラーゼ遺伝子発現制御因子のスクリーニング・同定・機能解析 新たに同定したセルロース誘導に関与する因子は酵素活性を有していると推定される事から、この因子がセルラーゼ遺伝子の発現を直接制御するわけではなく間接的に制御していると推測された。そこで、本因子の基質を同定することを目的として tandem affinity purification (TAP)法を用いて、本因子が作用する基質を同定することを目指す。また、更なる制御因子の同定を目指して、これまでに同定したセルロース資化能欠損株における変異点を同定する。特定した遺伝子の機能解析を遺伝学的に行うとともに、推定される機能を基に分子生物学的解析を展開し、セルラーゼ遺伝子発現制御を調節する因子の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Yeast two hybrid法を用いて転写因子ClbRの相互作用因子を探索するに当たり、近年明らかにされた糖質加水分解酵素遺伝子の発現制御因子とClbRのパラログ因子に絞って探索した。その結果、一度目のスクリーニングでClbRのパラログ因子が相互作用因子の候補として同定された。これにより、高額なYeast two hybridスクリーニング用のキットを複数購入して探索を繰り返す必要がなくなり、コストカットともに研究を進展させることが可能となった。 H25年度の研究により同定されたClbRの相互作用因子の機能解析を行うに当たり、クロマチン免疫沈降法に用いる抗体やレジンの購入にあてる。また、セルロース誘導初期の遺伝子発現を制御する因子の同定に成功したため、繰り越した研究費をこの因子の機能解析にあてる。
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Research Products
(10 results)