2014 Fiscal Year Research-status Report
輸送系の改変による有用有機酸高生産のための糸状菌セルファクトリの創製
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25450114
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
桐村 光太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90195412)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | aconitate isomerase / Aspergillus niger / cell factory / citrate transporter / fermentation / malate citrate shuttle / metabolic engineering |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)有機酸輸送系の改変を目的とした有機酸輸送系遺伝子の解析と利用 前年度の検討で、クエン酸生産糸状菌Aspergillus nigerに8種の有機酸輸送系遺伝子の転写を確認した。その中の1つであるミトコンドリア局在型クエン酸輸送体タンパク質(CTP)ホモログをコードする遺伝子の機能解析を実施した。真核微生物においてミトコンドリアと細胞質間の共役輸送を司るのはリンゴ酸-クエン酸シャトルが代表例で、その本体であるCTPホモログ遺伝子をA. nigerよりクローニングした。 さらに当該遺伝子破壊株を作製し、CTPホモログが糸状菌においては、培養初期の菌体の生育や、クエン酸代謝に影響することを明らかにした。現在、有機酸高生産株の創製を目的として、前年度および本年度の検討で得られた糸状菌における有機酸輸送系の知見を基に、基質となる有機酸の細胞内輸送と生成物としての有機酸の菌体外輸送の効率化を、遺伝子工学的な手法により検討している。
(2) クエン酸生産糸状菌を宿主とした異種遺伝子の発現による有用有機酸生産糸状菌の作製 機能性樹脂の原料となるトランス-アコニット酸生産について検討した。細菌由来のアコニット酸イソメラーゼ遺伝子を、クエン酸生産糸状菌を宿主として異種発現させた。当該異種発現株を利用して、グルコースを原料としたトランス-アコニット酸生産に成功した(論文未発表のため詳細省略)。現在、輸送系の改変と組み合わせることで、さらなる収量および収率の向上を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「有機酸輸送系の改変を目的とした有機酸輸送系遺伝子の解析と利用」については、遺伝子破壊によりクエン酸生産に影響を与える遺伝子を複数見出せている。クエン酸生産以外の有機酸を含め、細胞内外の濃度変化の再確認を行いながら慎重に機能解析を進めているが、有意義な成果が得られている。 「クエン酸生産糸状菌を宿主とした異種遺伝子の発現による有用有機酸生産糸状菌の作製」については、トランス-アコニット酸の生産について、前年度の大腸菌を宿主とした検討による予備的知見をもとに、クエン酸生産糸状菌を宿主とした世界初のグルコースを原料としたトランス-アコニット酸の発酵生産に成功している。 以上を通して、おおむね順調に進展と評価している。新規かつ有意義な成果が得られており、関連専門誌への論文投稿を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
糸状菌における有機酸生産に寄与する輸送系に関する研究例は少なく、A. nigerにおいてクエン酸生産に影響を与える輸送系遺伝子群の存在を、本研究課題で初めて明らかにした。今後は当該遺伝子群のより詳細な機能解析を進めていくとともに、当該輸送系の改変によるバイオベース有機酸の高生産を可能にする糸状菌セルファクトリの構築に取り組む予定である。
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