2013 Fiscal Year Research-status Report
Pichia酵母での蛋白質細胞表層発現:ハイスループット発現系構築法の開発と応用
Project/Area Number |
25450126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 公彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40314281)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質工学 / Pichia pastoris / 発現系構築 |
Research Abstract |
本研究では、細胞壁に局在するタンパク質Pir3pをアンカータンパク質として用いて、メタノール資化性酵母Pichia pastorisの細胞表層にタンパク質を発現させる。申請者が開発したP. pastoris細胞内でのDNA間の相同組換えを利用する方法で迅速(ハイスループット)に発現系の構築を行い、さらに、両端にタンパク質を融合できるPir3pの特徴を生かしN末端側に蛍光タンパク質GFPを融合することで迅速に発現量・位置の評価が出来る方法を開発する。 平成25年度は、新しい細胞表層発現用プラスミドの開発を行った。研究代表者が開発したプラスミドp9PrAS(P. pastorisを用いてハイスループットで発現系を構築するためのプラスミドであり、AOX1プロモーター、P. pastorisの複製開始点PARS1、選択マーカーHIS4などを含む)をバックボーンに用い、プラスミドpESPIR3FS(S. cerevisiae用の発現プラスミドであり、GAL1プロモーター下流に、合成分泌シグナル、GFP、Pir3p、FLAGタグ、Sma I制限酵素サイトが挿入されている)のsignal-GFP-PIR3-FLAG-Sma I部分を挿入して、新しいプラスミドpPrAS-ESPIR3FSを調製した。 本プラスミドをP. pastoris KM71株、GS115株に導入してGFP-Pir3p融合体の発現量、位置の確認を行った。その結果、GS115株を用いてメタノールで誘導をかけつつ増殖させた場合に、GFP-Pir3p融合体の細胞表層への良好な発現が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したプラスミドのテストのために平成25年度中に、プラスミドpPrAS-ESPIR3FSに相同組換でメダカα-アミラーゼの遺伝子を挿入しGFP-Pir3p-α-アミラーゼ融合体の発現を行い、発現量、位置の評価、菌体のα-アミラーゼ活性を測定する計画であったが行うことが出来ていない。これは、当初P. pastoris KM71株を用いる予定であったがGFP-Pir3p融合体が良好に発現せずGS115株を検討対象に加えたこと、研究代表者に対して学生の分属がなく研究代表者のみで全ての実験を行ったことが原因である。P. pastoris GS115株でGFP-Pir3p融合体の細胞表層への良好な発現が見られたことから、大きな遅れはなく研究を続けることが出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は以下のように研究を実施する計画である 「α-アミラーゼを用いた細胞表層発現系構築のテスト」 開発したプラスミドのテストのために、pPrAS-ESPIR3FSをSma Iサイトで切断し直線化したもの、メダカα-アミラーゼ遺伝子の両端にSma Iサイトの両端部分と同じ配列をPCRでつけたものを調製する。両方のDNAを用いて通常のP. pastorisの形質転換操作を行うことで、細胞内でDNA間の相同組換えが起こり発現プラスミドの構築と発現系の構築が同時に出来る(正確な位置に目的遺伝子が相同組換えで挿入される)。形質転換株はヒスチジンを含まない寒天培地上で選択しコロニーPCRによりα-アミラーゼ遺伝子の挿入を確認する。確認したコロニーについてグリセロールを含む液体培地で増殖し、メタノールを含む培地に移してGFP-Pir3p-α-アミラーゼ融合体の発現を誘導する。GFPの蛍光を指標に発現量の評価、細胞内での発現位置の評価を行う(抗体などを用いずそのまま観察出来る)。また、デンプンを基質として菌体のα-アミラーゼ活性をDNS法で測定する。 「トランスフェリンによる様々な金属の回収」 ニワトリトランスフェリン遺伝子を用い、1-2と同様に発現系の構築、発現誘導を行う。その菌体を、ガリウム、インジウム、またはビスマスを含む溶液に懸濁する。回収後の菌体に結合する金属の量をICP-AES法で定量する。トランスフェリンは二つの向かいあうリシン残基により酸性条件下で金属を放出するため、片方のリシンをグルタミンまたはグルタミン酸に変えた変異体も作成し、金属が溶けやすい酸性の溶液からの金属の回収も可能な方法を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
やや実験に遅れが生じたためDNAプライマーなどの消耗品の購入額が少なくなったこと、応募時に購入予定であった遺伝子導入装置(約43万円)が別予算で購入済みになっていたことから、やや支出額が少なくなった。 応募時に購入予定であった振盪培養機を予定通りに購入する。応募時の申請額より交付決定額が減額されているため、次年度使用額を加えて購入する。
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