2015 Fiscal Year Research-status Report
Pichia酵母での蛋白質細胞表層発現:ハイスループット発現系構築法の開発と応用
Project/Area Number |
25450126
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 公彦 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40314281)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | タンパク質工学 / Pichia pastoris / 発現系構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞壁に局在するタンパク質Pir3pをアンカータンパク質として用いて、メタノール資化性酵母Pichia pastorisの細胞表層にタンパク質を発現させる。申請者が開発したP. pastoris細胞内でのDNA間の相同組み換えを利用する方法で迅速(ハイスループット)に発現系の構築を行う。さらに、両端にタンパク質を融合できるPir3pの特徴を生かしN末端側に蛍光タンパク質GFPを融合することで迅速に発現量・位置の評価が出来る方法を開発し、その応用を検討する。 平成27年度は、平成25年度に開発し、平成26年度にGFP-PIR3p-メダカαアミラーゼ融合体でテストに成功した新しい細胞表層発現用プラスミドpPrAS-ESPIR3FSを用いて、貝のセルラーゼ融合体、鉄結合蛋白質トランスフェリン融合体の細胞表層への発現を目指した。セルラーゼは、二枚貝シジミ、巻貝Ampullaria crosseanのGH45ファミリーに属す分子量2万程度のコンパクトなエンドグルカナーゼを採用した。発現効率を上げるためにコドンを最適化した人工遺伝子DNAを購入し、まずエンドグルカナーゼ単独での発現系を構築した。どちらのセルラーゼもカルボキシメチルセルロース分解活性を持つことを確認した。また、両方のエンドグルカナーゼについて結晶化を試み、巻貝のエンドグルカナーゼについて結晶構造を決定した。トランスフェリンについても、融合体に採用する予定のオボトランスフェリンN半分子について良好な結晶化条件を発見したため高分解能での構造解析を行った。また、pHの変化がオボトランスフェリンの結晶構造に及ぼす影響について検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
開発したプラスミドpPrAS-ESPIR3FSを用いて、平成27年度にGFP-Pir3p-トランスフェリン融合体、GFP-PIR3-セルラーゼ融合体の発現系を構築し、菌体による金属イオンの回収、菌体によるセルロースの分解を検討する計画であったが行うことが出来ていない。これは、前述のようにオボトランスフェリンN半分子、巻貝エンドグルカナーゼの結晶構造解析がうまくいき、そちらに注力したためである。既に遺伝子のクローニングに成功しており、また結晶構造が得られたことは融合体を設計するうえでプラスに働くため、大きな遅れはなく研究を続けることが出来ると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は以下のように研究を実施する計画である。 「トランスフェリンによる様々な金属の回収」 ニワトリトランスフェリン遺伝子を用い、1-2と同様に発現系の構築、発現誘導を行う。その菌体を、ガリウム、インジウム、またはビスマスを含む溶液に懸濁する。回収後の菌体に結合する金属の量をICP-AES法で定量する。トランスフェリンは二つの向かいあうリシン残基により酸性条件下で金属を放出するため、片方のリシンをグルタミンまたはグルタミン酸に変えた変異体も作成し、金属が溶けやすい酸性の溶液からの金属の回収も可能な方法を開発する。 「貝のセルラーゼ、ヘミセルラーゼによる水草・海藻からのバイオエタノールの生産」 アメフラシ、カワニナのセルラーゼ、ヘミセルラーゼ遺伝子を用い、1-2と同様に発現系の構築、発現誘導を行う。琵琶湖からオオカナダモを採取し乾燥粉砕を行う。菌体を水草・海藻粉砕物2%懸濁液と混ぜ30℃、24時間反応を行い、溶液中のエタノール濃度を酵素法(ADH-NAD)で正確に定量する。 予定していたOMP1の結晶構造解析については、エンドグルカナーゼの結晶構造解析が予定外に進んだためそちらに注力して割愛する可能性がある。トランスグルタミナーゼ結合ペプチドの生産については、合成ペプチドにより同様の研究が研究室内の別の研究者によりうまく進んでいるため割愛する可能性がある。割愛した場合は、複合体からの目的タンパク質の単離について、GFP-PIR3p-エンドグルカナーゼを用いてエンドグルカナーゼ部分の単離精製で実用可能であることの検証を行う。
|
Causes of Carryover |
やや実験に遅れが生じたためDNAプライマーなどの消耗品の購入額が少なくなった。また、遺伝子の合成、クローニングが一度でうまくいき消耗品の購入額が少なくなった。それらの理由のため、前年度からの繰越金33万円を使用しきれなかったが、繰越金は19万円に減少しており前年度までより順調に進んでいると考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度行う予定であった実験も含めて、次年度に行う。
|