2014 Fiscal Year Research-status Report
植物におけるcGMP/NOシグナリングの標的転写因子の同定と転写調節機構の解明
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25450127
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山形 裕士 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00159203)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / 遺伝子発現調節 / ニコチアナミン合成酵素 / プロモーター / 転写因子 / GT-1 / cGMP |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイズのcGMP応答性遺伝子をDNAマイクロアレイ分析により網羅的に解析し、フラボノイド合成系酵素以外に複数のMyb転写因子を含む多くの遺伝子の発現がcGMPにより誘導されることを見出した。一方、NOによって発現が強く誘導されるシロイヌナズナのニコチアナミン合成酵素遺伝子1(AtNAS1)のプロモーター中にNO応答性エレメント(NO-responsive element, NORE)を同定した。すなわち、AtNAS1遺伝子の様々な長さのプロモーターとGUSレポーター遺伝子の融合遺伝子をシロイヌナズナの光独立栄養培養細胞(T87細胞)のプロトプラストにPEG法で導入し、ニトロプルシドナトリウム(SNP、NO発生剤)で3時間処理後、GUS活性を測定する一過的遺伝子発現系により解析した。その結果、AtNAS1の翻訳開始コドンの上流-94~-82塩基の配列(GCGAGGGTTAAAG)がAtNAS1のNO応答に必要かつ十分な配列(NORE)であることを明らかにした。この配列はGT-1 box様の配列を含んでいたので転写因子AtGT-1を大腸菌で発現・精製し、NOREへの結合をEMSAで調べた。組換えAtGT-1はNOREに強く結合し、その結合にはGGTTAA配列が重要であることを各種competitorを用いて示した。一方、SNPで処理した組換えAtGT-1のNOREへの結合能が低下したことから、S-ニトロシル化による調節が示唆された。以上の結果、AtGT-1がAtNAS1のNO応答に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナのNO応答性遺伝子発現調節の解明を目的として、NAS1遺伝子プロモーター中にNO応答シスエレメント(NORE)を同定するとともに、この配列に転写因子GT-1が結合することを示すことができた。さらに、GT-1との結合に必要なNORE中の配列を1塩基レベルで同定できたので、当初の計画をほぼ達成できた。さらにS-ニトロシル化の関与が示唆されたことは予想外の成果であった。一方、ダイズのcGMP応答性遺伝子の発現調節機構については計画していた転写因子の同定に至らなかったが、新たにcGMP応答性遺伝子の網羅的解析を行ない、Myb転写因子を含めcGMPにより発現が調節される多くの遺伝子を見出したことは、当初の計画以上の成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
NOによるAtNAS1遺伝子の発現調節機構の解析に注力し、転写因子GT-1の機能解明を進める。また、GT-1以外の転写因子の関与についても解析を進める。これらの結果を総合して、NOによる植物遺伝子発現調節機構のモデルを提案したい。また、NAS1遺伝子のcGMPによる発現調節機構を解析し、cGMPとNOシグナリングの関連を調べる。一方、ダイズのcGMP応答性遺伝子として見出されたMyb転写因子の機能をCHS遺伝子プロモーターへの結合を中心に調べる。
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Causes of Carryover |
当該年度に予算額はほぼ使用したが、転写因子の修飾に関する研究が年度内に終了しなかったために、24,066円を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額24,066円は試薬類の購入に使用する。
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