2014 Fiscal Year Research-status Report
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25450146
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西田 芳弘 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (80183896)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイコプラズマ / 糖脂質 / 診断プローブ / 糖鎖合成 / グリセロ糖脂質 / フルオラス合成法 / 肺炎マイコプラズマ / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
-マイコプラズマ糖脂質抗原(GGLs)同属体の合成と機能評価- 肺炎マイコプラズマの細胞膜には脂肪酸の長さがことなるGGL(C16)とGGL(C18) の2種が存在している。平成26年度は、診断法や将来のワクチン開発にむけて、脂肪酸の長さが異なる一連のGGL同属体(C12,C14,C16,C18)を合成することにした。化学合成は、市販のD-ガラクトースと光学活性(S)-グリセロール誘導体を出発原料にして行なうことにした。最終段階の脱ベンジ化反応(水素化反応)の収率がC18同属体で低下したが、おおむね良好な収率で、目的とする4種のGGLs誘導体が合成できた。次に、合成GGLをもちいて、診断用ELISAプレートを作成し、抗GGLモノクロナール抗体と蛍光標識化二次抗体を用いて、評価試験を行なった。その結果、脂肪酸が大きくなるにともない、モノクロナール抗体の結合量が増えた。GGL-C12の結合量に対してGGL-C16の結合量は約1.2倍、GGL-C18では、1.5倍も多く結合することが判明した。 -フルオラス法を用いた診断プローブの合成開発- GGLを利用する診断法の難点は、化学合成に時間と経費がかかることである。今後、全世界に向けて診断法を普及するには、GGLの生産工程を短くする新技術の開発が必要である。また、診断に十分な機能をもちながら、合成と供給が格段と容易な糖脂質プローブを新たに開発することが重要である。平成25年度から、野口研究所との共同研究でフルオラス法を利用したGGL生産法の開発研究を開始し、平成26年末にGGLの二糖抗原をフルオラス法で化学合成する技術を開発することげできた(国際雑誌 Carbohydrate Res., 2015に発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に推移している点: 1.脂質部位の脂肪酸が異なる4種のGGLsホモローグの化学合成を、当初の予定通り完了し、基礎的な機能評価を行うことができた。2.これまで糖脂質抗原(GGLs)の二糖部分の化学合成には、各段階においてシリカゲルカラム精製操作が必要であった。今回、フルオラス法を適用した糖鎖合成法を確立することができ、GGLs抗原糖鎖の合成が、比較的容易に行えるようになった。この結果は、申請時に予想されていなかった進展である。 難航している点: グリセロ糖脂質GGLsをコレステロール配糖体に置き換えた新規診断プローブ(GGLs-コレステロール)の合成を進めてきた。当初、26年度中に新規プローブの化学合成を完了する予定であったが、難航している。特に、コレステロール水酸基へのβ-選択的なグリコシル化反応に苦慮している。脱離基が異なる数種の糖供与体を試してみたが、目的とするコレステリル β-グリコシド誘導体を高収量で得る条件が、未だに設定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1)マイコプラズマ肺炎の診断プローブとして、炭素鎖長が異なる一連のGGLs誘導体を化学合成した。予備的な機能評価によって、C16よりも C18 (ステアリン酸)を脂質部位に持つGGLsホモローグが、診断プローブとして高いポテンシャルを持つことが判明した。今後、実際の血清試料を用いて、合成糖脂質抗原用いた診断法の有効性を明らかにしたい。 2)前年度までの研究で、GGLsなどのβ-ガラクトグリセロ糖脂質はリン脂質とは異なる分子どう力学特性を示すことがわかってきた。このことは、細胞膜内で、糖脂質同士が集合化してラフと(マイクロドメイン)を形成する可能性を強く示唆する。グリセロ糖脂質は、セラミドを脂質とするスフィンゴ糖質と異なり、リン脂質とおなじグリセロ脂質であることから、細胞膜全体に広がって存在すると考えられている。GGLsや類似するβ-ガラクトグリセロ糖脂質がリン脂質膜の中でマイクロドメインを形成することを証明したい。 3)合成が容易であると見込んでいた コレステロール型 GGLsの化学合成が、予想外にも難行している。コレステロールの各種溶媒へ溶解性や液晶性(自己集合化)の諸性質を見極めながら、コレステリル β-グリコシシドを効率よく合成する手法を確立する必要がある。 4)糖脂質抗原GGLsを、直接、質量分析装置(TOF-MS)で検出する新規手法の検討に入る。内部標準試料として、GGLs脂肪酸末端のメチル基(-CH3)が重水素置換されたGGLs-CD3を新たに分子設計した。今後、これを化学合成して、TOF-MSを用いた脂質抗原の迅速測定法を確立したい。
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Causes of Carryover |
限られた研究費を最大限有効に使用するため、 1)大量に使用する有機溶媒(トルエン、ヘキサン)や試薬類(糖、脂質)などは、できる限り大きさサイズで購入して、2,3年通して使用することにしている。今年度は、当初、計画していた以上に、手持ちの試薬類でまかなうことができた。2)論文の投稿システムが電子化されて別すりなども無料配布されるようになったことから、予想以上に、論文の掲載料が安価にすんだ。3)使用した有機溶媒は、原則、回収して再利用することを、学生に徹底させたところ、思いのほか、効果的に機能した。4)無駄なシリカゲルカラム精製をなくすよう、学生を指導したところ、トレーニングしながら徹底したところ、予想以上に、有機溶媒の購入にかかる経費が節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1)研究課題に取り組んでから、この2年間で使用した経費のほとんどは(90%以上)は、指導する学生と一緒に行った化学実験に費やした。有機溶剤と反応試薬である。多く使用する溶媒(トルエン、酢酸エチル、ヘキサン)については、これまで通り、濃縮回収と蒸留再生を効率的に行ない、物品費にかかる経費は、自己努力で、できる限り減らす。 2)比較的安定な試薬類は、大き目のサイズで購入し、共同利用をしながら経費の節約をこころがける。3)本課題は今年度が最終年度であるため、節約した物品費は、国際会議や国際誌への成果報告にあてたい。4)これまでの研究をまとめ、さらに前進した課題を発展的に立ち上げる準備を開始する。試行錯誤を繰り返す化学実験には、予想もつかないほど物品費が膨らむことがある。前年度の未使用分(約20万円)の一部は次へのチャレンジに使用する。
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Research Products
(12 results)