2014 Fiscal Year Research-status Report
トリテルペン環化酵素の活性評価及び基質アナログによる触媒・基質認識機構の解明
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25450150
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
星野 力 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20102709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トリテルペン / βアミリン / オキシドスクアレン / 部位特異的変異実験 / 基質アナログ / 酵素反応 / ホペン |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに酵素精製法を確立し(FEBS J, 280, 1267-128, 2013),それを基にしてF728残基及びF474残基の機能を報告できた(Chem. Eur. J., 19, 17150-17158、2013;Org. Biomol. Chem., 12:3836-46, 2014).同じ芳香族アミノ酸のPhe残基にも関わらず、前者はカチオン/π相互作用、後者は立体的なサイズが環化反応に影響を及ぼすことを明らかにできた。今年度は、Y259及びW257残基の機能解析を詳細に進めた。特に、トリテルペン環化酵素の触媒残基の活性評価として重要な酵素発現量を見積もる際に、我々は新たに酵母内で恒常的に発現しているGAPDHを内部標準に用いる手法を確立し、精度を高めることができた。また、L734残基をGやAに置換したところ、βーアミリンの他にtaraxerolが大幅に増加し、また4環性や5環性のlupeolが生産された。この事は、L734は、D,E環近傍に位置することを示している。また、M729残基をG.A,V, Lサイズを変えて酵素活性を見積もったところ、アミノ酸側鎖のvan der Waals容積に比例して、βーアミリンが生成することを見出した。M729残基はE環の近傍に存在することを示している。従って、M729残基は、正常なfolding conformationを保つ上で重要な役割を担っていることを明らかにできた(学会発表済)。 基質アナログを化学合成し、基質のどの構造部位が正常な環化反応に重要かといった研究も進めている。基質の19位のメチル基を水素とエチル基に置換した研究成果は、Org. Lett.(16:3548-51,2014)に発表した。水素置換体は、時間依存的に酵素を失活させるという自殺基質であるという興味深い結果を得ることができた。また、基質末端部位での水素置換体での実験結果を現在投稿論文としてまとめている。また、エチル基置換体での詳細な実験を進めている(一部学会発表済)。基質中央部での水素とエチル基置換体の酵素反応も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに活性部位として同定したアミノ酸残基として、F728, F474,Y259, W257残基4種と広げた。また、学会発表の段階であるがL734やM729残基の機能も特定できている。論文にするには、もう少し細部を詰める必要がある。実験を進め、早急に論文としたい。トリテルペン環化酵素は、活性部位が一箇所ではなく、多数存在することを我々はスクアレンーホペン合成酵素の長年の研究によって明らかにしてきた。更にβーアミリン合成酵素の触媒活性に重要な部位の同定を進める必要がある。 また、基質アナログの研究も幾つかの構造単位の重要性を明らかにしてきた。末端部位の水素置換体については、あと2箇所修飾した基質アナログを合成し、総合的に議論できるところまで進展してきた(学会発表)。ただ、炭素数が一個多いエチル基置換体については、進展してない。化学合成を更に進める必要がある。目的の化合物の合成が進んでない。合成法を考え直す必要を感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は終了年度になるので、完成を目指したい。活性部位の同定のために幅広い変異酵素の作成に取り組む。現在、トリテルペンとして高度に保存されているW534, W612,C486, V483残基等の変異実験を計画している。更なる変異株の作成も必要であろう。大腸菌は2日で培養が終了するが、酵母では約一週間要する。これらの残基が終了するまでには、かなりの時間がかかると考えている。効率的な実験を計画したい。 基質アナログとして26-nor-,27-nor-及び28-nor-体の酵素反応の完成を試みる。合成法は確立したが、26-nor体は時間依存性があり、酵素産物の単離とNMRによる同定が終了してない。酵素が失活する自殺基質である可能性が大きく、難航している。酵素量を多く集め、産物のNMR同定を進める。また、ホペン合成酵素との基質アナログとの酵素反応を進める。βアミリンとホペン合成酵素の基質認識の違いを基質アナログとアミノ酸置換体の変異酵素の作成で得られる知見を総合的に検討して、なぜ同じ基質が環化酵素の違いによって生成物が大きく異なるのか、著名な研究者らの長年の疑問に答えが見つかるように進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度の学会発表と論文投稿料(英文校閲を含む)に当てるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会及、天然有機化合物討論会及び農芸化学会に参加発表に当てる。
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