2014 Fiscal Year Research-status Report
食事誘導性肥満・耐糖能異常の発症過程におけるGLP-1の関与
Project/Area Number |
25450159
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比良 徹 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10396301)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | GLP-1 / 食事誘導性肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究において、高脂肪+高ショ糖食摂取により早期において食後血糖応答の上昇、即ち耐糖能異常が生じること、その後にGLP-1分泌応答の増進が起きることが明らかとなった。その際の食事負荷試験においては、通常食を水に懸濁した状態で食事を強制経口投与した。今年度は、食事負荷試験の際に、より生理的な条件として粉末飼料を一定量自由摂取させ、肥満誘導過程における食後血糖、GLP-1分泌、インスリン分泌応答を観察した。耐糖能異常、肥満を強く誘導する高脂肪+高ショ糖食を正常ラットに摂取させ、5週間の試験期間中に定期的に粉末飼料を用いた食事負荷試験(耐糖能試験)を実施した。 その結果、試験3周目から高脂肪+高ショ糖食群の空腹時血糖が高まったが、食後血糖値に明確な差は見られなかった。一方、GLP-1分泌は2週目より高脂肪+高ショ糖食群が高い応答を示し、インスリン分泌も同様の結果となった。これにより、肥満誘導食摂取により、早期において食後のGLP-1分泌応答が高まり、このことがインンスリン分泌を高めて、食後高血糖を抑制することが考えられた。このことは、持続的な肥満誘導食摂取に対して、GLP-1を分泌する消化管内分泌系が食事への感受性を高めることで、早期に防御的に適応することを示唆している。消化管粘膜の栄養素感知受容体分子のmRNA発現を解析したところ、一部の脂肪酸受容体の発現が上昇しており、このことが感受性亢進に寄与することが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食事負荷試験の条件をより生理的な条件に変えることで、前年度と異なる結果が観察されたが、これにより、消化管の感受性が体重や血糖値に差異が生じるよりも早い段階で変動(亢進)することが見出された。また、その感受性亢進に関与しうる候補分子を見出せた点においておおむね順調と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度において観察された、高脂肪+高ショ糖食群での食後GLP-1分泌応答の増加が、食後高血糖の抑制に寄与するのかを、GLP-1受容体阻害剤を用いて引き続き検討する。また、これらの現象において脂肪、ショ糖のどちらの影響が大きいのかを調べるため、高脂肪食と高ショ糖食をそれぞれ与える。 高脂肪+高ショ糖食群での食後GLP-1分泌応答の亢進について、それを模倣できる食品成分を上述の肥満誘導食に添加する。一部の食物繊維がGLP-1の産生を高める可能性が考えられる。 動物組織中でのGLP-1産生細胞内の詳細な変化を観察するには限界がある。申請者が保有するGLP-1産生細胞株を 用い、高脂肪、高ショ糖などの条件に直接暴露した際、あるいは、それらの食事条件で飼育した動物の血漿成分 などを培地に添加して、in vivoと同様の変化が見られるかを検討した上で、増殖、細胞内情報伝達経路などを解析し、細胞レベルでの変動を明らかにする。
|
Research Products
(3 results)