2013 Fiscal Year Research-status Report
原乳における黄色ブドウ球菌の増殖および毒素産生量予測
Project/Area Number |
25450164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
藤川 浩 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90456252)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エンテロトキシン / 黄色ブドウ球菌 / 生乳 / 毒素産生 / 自然汚染微生物 / 増殖 |
Research Abstract |
大阪で起きた黄色ブドウ球菌エンテロトキシンAに汚染された乳製品による大規模な食中毒事件の原因を科学的に再検討し、二度と同様な事件が起きないことを本研究の目的とする。大阪での事件は北海道大樹工場で脱脂粉乳製造中に起きた停電事故による処理途中の原乳の高温(約40℃)下での長時間貯留が毒素産生の大きな要因ではないかと推察されているが、この高温での毒素産生について今年度は検討した。 各種微生物に自然汚染された生乳中での黄色ブドウ球菌の増殖とエンテロトキシンA産生量を高温(36-48℃)で保存した。ここで生乳は当大学内農場から自然微生物汚染濃度の高い試料と低い試料を用意した。なお、両試料に黄色ブドウ球菌汚染はなかった。各試料に本毒素産生菌3株の混合菌液を接種し、36、40、44、48℃で約3日間保存した。その間、試料を採取し、ブドウ球菌数と毒素量を定量した。すなわち、ブドウ球菌数はベアードパーカー平板、毒素量はバイダスキットを用いて測定した。 その結果、両生乳試料でブドウ球菌は36、40、44℃で増殖がみられ、その増殖に温度による有意差はなかった。48℃では両試料で本菌は徐々に死滅した。毒素は調べた温度中、低濃度微生物汚染の生乳で44℃、高濃度汚染乳で40℃で最も産生量が高かった。一方、この結果、北海道での事故の生乳温度は今回の毒素産生に最適な温度とほぼ一致することが示された。また、高濃度汚染乳では毒素産生量は大きく抑制された。 次に、これら最適温度下で本菌初期菌数による毒素産生量への影響を調べた。その結果、増殖に初期菌数による明らかな差はなかったが、毒素産生量は初期濃度が高いほど高かった。また、いずれの条件でも保存時間が長くなるに従い、生乳中の毒素量が徐々に減少していった。これは、生乳中の微生物増殖に伴い、有機酸が次第に増加していったため、不活化されたのであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪での食中毒事件に関連して、およそ40℃という高温下での生乳中のエンテロトキシン産生を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するに当たり、生乳および乳製品中における黄色ブドウ球菌エンテロトキシンを精確にかつ低濃度でも検出できる前処理方法の開発が必須となる。毒素量の測定はバイダスキットを用いて行うが、今後、まず生乳試料のその前処理方法を開発する。次に、その前処理方法を確立した後、各環境条件下での乳中での黄色ブドウ球菌の増殖とエンテロトキシン産生量を定量的に検討し、解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
原乳および乳製品中の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン濃度を精確にかつ低濃度でも測定するため、前処理法を確立し、さらにその方法を用いて保存試験での毒素濃度を検討する上で、実験に経費が必要なため。また、その発表等にも経費が必要なため。 1.原乳および乳製品中の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン濃度を精確にかつ低濃度でも測定するため、測定の前処理法を新たに確立させる。すなわち、原乳あるいは乳製品に本毒素を添加し、高い回収率を得られる前処理法を確立する。 2.確立した前処理法を使って、原乳および乳製品中に黄色ブドウ球菌を接種し、各種条件下で保存し、その間の毒素濃度を測定する。得られた結果を解析する。
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