2013 Fiscal Year Research-status Report
食餌誘導性脂肪肝マウスに由来する新規な脂質代謝関連遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
25450166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 美里 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (20456586)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / 高脂肪食 / 脂質代謝 / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
本研究では、各個人の遺伝的素因に栄養状態の変化が加わる遺伝子―食事因子間の相互作用によって発症が増加している生活習慣病の中でも脂肪肝に注目している。今までの研究からモデルマウスを用いて、食餌誘導性脂肪肝の原因遺伝子の候補遺伝子Iah1を抽出したが、この遺伝子の哺乳動物における機能についての報告は存在せず、機能未知な遺伝子である。今年度は、以下の3つの研究に着手した。 ①Iah1タンパク質の機能解析 (in vitro): マウスIah1タンパク質を培養細胞において発現させ、組換えタンパク質の精製を行なった。酵母Iah1の基質であるエステルに対して酵母Iah1組換えタンパク質の酵素活性を測定したところ、既報のようにエステラーゼ活性を確認することができた。この測定系において、マウスIah1組換えタンパク質を酵素として用いてエステラーゼ活性の測定を行なったが、酵素量が充分でなくエステラーゼ活性の有無を評価することが出来なかった。 ②Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro): 我々が昨年度までに見出したIah1遺伝子の上流に存在する119bpの欠失変異を有するDNA領域をクローニングし、プロモーターアッセイを行なった。119bpの欠失を有するマウスの肝臓ではIah1の遺伝子発現量が低値を示すことから、欠失配列では正常配列に比べてプロモーター活性の低下を期待したが、両配列間でプロモーター活性に差は観察されなかった。この欠失は遺伝子発現量制御には関与しないと考えられた。 ③Iah1遺伝子の肝臓特異的欠損による脂肪肝形成の検証 (in vivo): Iah1遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作製するために、IKMCよりIah1エクソンを挟んでloxP配列を有するターゲッティングマウスを入手した。そして、肝臓特異的にCreを発現するマウスについても入手し、交配に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①Iah1タンパク質の機能解析 (in vitro) 当初FLAGタグでのマウスIah1タンパク質の精製を行い、このIah1-FLAGタンパクを用いてエステラーゼ活性をまず測定し、リパーゼ活性も測定する計画をしていたが、Iah1-FLAGタンパク質の培養細胞での合成量と回収量が予想していたよりも低く、様々な基質に対する酵素活性測定に充分なタンパク量を得る事が出来なかった。その解決策として、培養細胞よりも大量調製が可能な大腸菌を用いることにした。そこで、大腸菌でのタンパク質発現誘導に適した新たなIah1-Hisタグ付き発現ベクターの作製に現在取り組んでいる。 ②Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro) 遺伝子の転写開始点の上流の119bpの欠失を含む領域のプロモーターアッセイを行うことができ、これが転写調節には影響しないと示唆された。当初の予想に反する結果であったが、ほぼ予定通りの解析を行うことが出来た。 ③Iah1遺伝子の肝臓特異的欠損による脂肪肝形成の検証 (in vivo) 予定通りに、フランスよりターゲッティングマウスの入手と肝臓特異的Cre発現マウスを入手することが出来た。しかし、ターゲッティングマウスの繁殖能が低いこと、Creマウスの入手に時間がかかったために交配が少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①Iah1タンパク質の機能解析 (in vitro) 今回明らかとなったマウスIah1組換えタンパク質の動物細胞での生産と精製効率を改善するために、新たなプラスミドベクターの作出に取り組み、酵素活性の有無を判断するのに充分なタンパク質を得ることが期待される大腸菌での大量精製を試みる。酵母で確立したエステラーゼ活性測定系を用いて、アミノ酸の相同性の低い酵母Iah1とマウスIah1との間の基質特異性を検討する。 ②Iah1遺伝子転写調節領域の同定 (in vitro) 遺伝子の転写開始点の上流に存在する119bpの欠失領域が転写調節には影響しないと考えられるが、明らかにIah1の遺伝子発現量とIah1遺伝子上流領域の変異との間には関連性が見られる。そのため、119bpの欠失以外に転写制御を行う変異やSNPsがあると推察される。この他の遺伝子発現制御に関わる変異(SNPsなど)の探索をDNA配列解析によって行い、見出した変異についてはプロモーターアッセイで因果関係を明らかにする。 ③Iah1遺伝子の肝臓特異的欠損による脂肪肝形成の検証 (in vivo) 肝臓特異的Cre発現マウスとの交配に着手し、肝臓特異的ノックアウトマウスの作出を目指す。また、全身ノックアウトマウスの作出も開始する。
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Research Products
(1 results)