2014 Fiscal Year Research-status Report
機能性抗酸化因子と多価不飽和脂肪酸との相互作用による脂質代謝制御
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25450177
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
井手 隆 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (20127971)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / α-リポ酸 / 脂肪酸合成 / 脂質代謝 / 酸化ストレス / 抗酸化作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では機能性抗酸化因子と多価不飽和脂肪酸の組み合わせが脂質代謝に与える影響を明確にする。本年度はα-リポ酸と魚油の組み合わせ効果に関し検討を行った。ラットを6群に分け魚油を0、2あるいは10%含むα-リポ酸無添加食および添加食(0.25%)をラットに21日間与えた。必ずしも有意差が認められない場合もあったが、魚油は血清のトリアシルグリセロール(TG)、コレステロール(Chol)、リン脂質と遊離脂肪酸のレベルを量依存的に低下させた。α-リポ酸の添加はさらにその値を低下させた。魚油とα-リポ酸は肝臓のTGとCholのレベルも低下させた。魚油とα-リポ酸はともに肝臓の脂肪酸合成系酵素の活性とmRNA量を低下させ、両者を含む飼料では相加的に低下した。血清インスリン濃度は魚油とα-リポ酸により低下あるいは低下傾向を示した。また両者は血清アディポネクチン濃度を増加させ、両者の添加で相加的に増加した。マロンジアルデヒドの血清と肝臓での濃度は魚油で量依存的に増加したが、α-リポ酸により低下した。α-リポ酸の低下効果は血清でより明確であった。またα-リポ酸はDNA酸化マーカーである血清の8-OHdG濃度を大きく低下させた。肝臓のグルタチオン濃度は魚油とα-リポ酸により増加した。この変化はグルタチオン合成の制御酵素γ-グルタミルシステイン合成酵素の活性と酵素の2つのサブユニットのmRNA量の増加を伴っていたので、グルタチオン濃度増加はその合成増加に基づくと思われる。また、魚油とα-リポ酸両者とも強い活性酸素除去機能をもつといわれるメタロチオネイン1および2のmRNA量を大きく増加させた。特に、α-リポ酸による増加は数十倍にもなった。以上のように魚油とα-リポ酸の組み合わせは肝臓の脂肪酸合成の大きな低下を伴い、強い脂質低下効果を発揮することが示された。さらに、α-リポ酸は魚油によって引き起こされる酸化ストレスの軽減に有効と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は機能性抗酸化因子と多価不飽和脂肪酸の同時摂取により飛躍的に脂質代謝制御機能を増大させ、かつ多価不飽和脂肪酸摂取がもたらす酸化ストレスの軽減を図り、生体調節機能が増大し、かつ安全な新規機能性食品素材の開発に資することを目的としている。昨年度は食餌へのセサミンとアラキドン酸同時投与による脂肪酸酸化増強作用発現にはアラキドン酸油脂添加4%で十分であることを明らかにした(アラキドン酸として1.6%)。さらに、4%のアラキドン酸油脂とセサミン両者を含む飼料投与で血清脂質濃度は大きく低下することを示し、低用量のアラキドン酸油脂とセサミン同時摂取が脂質代謝改善に極めて有効であることを示した。本年度は魚油とα-リポ酸の同時摂取の効果を調べたが、同時摂取が血清脂質濃度低下に極めて有効であり、脂質低下効果は脂肪酸合成の相加的低下に基づくことを明確にした。また、魚油は酸化ストレスマーカーの値を上昇させるがα-リポ酸はこれを抑制した。この抑制作用にはα-リポ酸自身の抗酸化能に加え生体内抗酸化系の活性化が大きな要因であることを明らかにした。以上のように、脂質代謝、酸化ストレスの研究分野での新知見を数多く加えている。研究は順調に進行し、大きな問題点はない。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性抗酸化因子と多価不飽和脂肪酸の組み合わせが脂質代謝に与える影響に関して、27年度は多価不飽和脂肪酸としてα-リノレン酸に富むシソ油とα-リポ酸の相互作用の解明を目的とした、動物試験を行う。ラットを6群に分け15%のパーム油(パルミチン酸とオレイン酸が主成分)、コーン油(リノール酸)あるいはシソ油(α-リノレン酸)を含むα-リポ酸添加(0.2%)あるいは無添加食を3週間与えた後、痲酔下全採血により屠殺・解剖し、血清および肝臓を採取し、種々代謝パラメーターの分析を行い、その作用を明確にする。測定項目は脂質代謝と酸化ストレス関連のもので、以下のものを予定している。(1)脂肪酸代謝系酵素の活性(脂肪酸合成系酵素6種、脂肪酸酸化系酵素6種)、(2)脂肪酸代謝系酵素および関連した因子のmRNA量(脂肪酸合成系酵素6種、脂肪酸酸化系酵素10種およびこれら代謝系に関連する転写因子等5種)、(3)血清と肝臓の脂質レベル(トリアシルグリセロール、コレステロール、リン脂質)、(4)脂質代謝制御に関与する血清のホルモン、サイトカインのレベル(インスリン、レプチン、アディポネクチン)、(5)酸化ストレスマーカーのレベル(肝臓と血清のマロンジアルデヒド、8-ヒドロキシデオキシグアノシン)、(6)生体の抗酸化因子(肝臓グルタチオン、アスコルビン酸濃度)、(7)抗酸化関連酵素の活性(グルタチオン合成系酵素、グルタチオン転移酵素、グルタチオン還元酵素)、(8)抗酸化関連酵素および因子のmRNA量(グルタチオン合成系酵素、グルタチオン転移酵素、グルタチオン還元酵素、グルタレドキシン、メタロチオネイン)。以上のような解析により、シソ油(α-リノレン酸)とα-リポ酸の組み合わせの脂質代謝改善作用および酸化ストレスに与える影響を明確に出来ると考えている。研究の進行速度は当初予定より若干遅れ気味ではあるが、ほぼ順調に進展し、大きな問題はない。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通り予算執行を行った。物品の価格により、収支を0にあわせるのが難しかったため少額の余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が発生したが、極めて少額であり、この額と合わせての次年度の特別な使用額の策定は必要ない。当初計画通り、予算の執行を行っていく。
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