2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
森山 達哉 近畿大学, 農学部, 准教授 (60239704)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 経皮感作 / 大豆タンパク質 / アレルゲン / IgE / IgG |
Research Abstract |
本研究では、食品タンパク質抗原の経皮感作について、どのような食品タンパク質が経皮感作しやすいのかという点や、経皮感作のメカニズムなどをマウスや細胞を用いて明らかにすることを目的とする。食品タンパク質としては、石けんや化粧品などに配合されることが多い植物性食品由来のタンパク質に焦点を当てている。なかでも、実際に化粧品などに配合されている大豆や米、トマト、果物などを主たる研究対象とする。今年度は、マウスを用いて経皮感作と経口感作によってどのようなタンパク質に対するIgEが産生されるのかという点を大豆を用いて明らかにした。マウスに豆乳由来の大豆タンパク質を全タンパク質(カゼイン)のうちの約4分の1を置き換え経口的に摂取させた。対照はカゼインのみをタンパク質源として与えた。その結果、大豆(豆乳)結合するIgE値やIgG値は、対照の場合は高い個体はほとんど存在しなかったが、豆乳群では数匹の高値を示す個体が見られた。これらの個体のIgEやIgGは大豆中の50や25,20,18kDa付近の大豆タンパク質を認識した。一方、大豆タンパク質を皮膚に塗布し、感作を試みた場合、大豆タンパク質とSDSを同時に添加した場合の方がより多くのマウスでIgEやIgGが高くなり、また多くのマウスで37kDa付近のタンパク質に対する抗体が産生された。以上のことから、大豆タンパク質をモデルとして経皮感作と経口感作を比較したところ、感作されるタンパク質が異なり、経皮感作の場合はとくに37kDaのタンパク質が特徴的であり、これが経皮感作されやすい大豆タンパク質であると推察された。また、感作における食品側の要因として、加工法などによってアレルゲンの存在量がどの程度異なるのかという点を大豆とその発酵食品である味噌とで比較し、味噌では多くの大豆アレルゲンが低減化し、種類によって残存レベルに差異があることなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書通り、マウスを用いて経皮感作の系を構築し、実際に大豆タンパク質を皮膚に塗布することでいくつかのマウス個体が大豆タンパク質に対するIgEやIgGが高値となり、そのターゲットタンパク質として37kDaのものが特徴的であった。また、経皮感作と経口感作では異なるタンパク質が感作されやすいことが示唆され、これらの感作経路の違いが感作抗原の違いとなることが示唆された。また、抗原タンパク質単独と比べてSDSをともに塗布することでより感作しやすいことが確認でき、これは小麦を用いた既報と一致した。このように1年目の研究成果としてはほぼ予定通りであり、順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、再現性の確認を兼ねて再度、大豆の他にも米やトマトなどを用いて経皮感作と経口感作の感作されうる抗原の違いを明らかにし、それらの抗原を同定する。大豆に関しては37kDaのタンパク質を同定する。こうして経皮感作されやすい食品タンパク質の特性を明らかにしていく。また、皮膚の免疫を司るランゲルハンス細胞をマウスから単離し、この細胞を用いて経皮感作されやすいタンパク質刺激によるインビトロでの活性化能を評価し、細胞レベルで経皮感作のされやすさを規定することが可能かどうか検討する。また、皮膚のバリア機能と経皮感作は強い相関があるので、皮膚のバリア機能に対する食品タンパク質の影響なども検討する。さらに、アトピーモデルマウスを用いた経皮感作についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は、感作につづく抗原刺激時の惹起についても評価する目的で惹起時に変動する直腸温度を測定する温度計を購入予定であったが、好適品が見あたらず、また知り合いの研究者からの借用が可能となったため、今年度は購入を見送った。そのために予算執行額に余裕が生じ、次年度に約13万円程度繰り越すこととなった。 次年度には、細胞を用いた実験やモデルマウスを用いた実験を計画しており、消費税も上がったことから持ち越した研究費をそれらの高額実験材料の経費として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)