2014 Fiscal Year Research-status Report
トレハロースの新たな水和特性とタンパク質凝集抑制メカニズム
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25450188
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Research Institution | Osaka Aoyama University |
Principal Investigator |
奥 和之 大阪青山大学, 健康科学部, 教授 (40549797)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トレハロース / 疎水性アミノ酸 / タンパク質凝集抑制 / 核磁気共鳴分析法 / 分子動力学法 / βアミロイドタンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
トレハロースがもつ「水との相互作用の特異性」の解明と、トレハロースータンパク質・アミノ酸間相互作用の新しい描像を示すため、トレハロースおよびトレハロース誘導体と各種アミノ酸との相互作用について、核磁気共鳴分析法(NMR法)により、相互作用の確認、作用部位の特定を行った。トレハロースと芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)の等モル混合液を二次元NMR(NOESY)に供したところ、トレハロースプロトンと芳香族アミノ酸ベンゼン環プロトン間に明確な相関信号(NOE)が検出された。また、トレハロース構造のどの部位がアミノ酸との相互作用に起因するのかを確認するため、トレハロースカーボンのT1緩和時間を調べるとともに、計算シミュレーションによるトレハロースと芳香族アミノ酸との錯体形成を確認中である。 次にトレハロースのタンパク質凝集抑制効果の解明のため、モデルペプチドとしてアルツハイマー原因ペプチドであるβアミロイドタンパク40(Aβ40)を用いて解析(水晶発振子マイクロバランス法(QCM法)およびNMR法による相互作用解析を実施中である 現在、平成25年度および平成26年度の研究成果を論文投稿中(日本農芸化学会英文誌、Bioscience, Biotechnology and Biochemistry)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トレハロースと芳香族アミノ酸との錯体形成・相互作用を物理化学的手法と理論科学的手法の双方で確認することができた。モデルペプチドを用いた作用解析ではQCM法による凝集抑制作用について確認できたが、NMR法による相互作用解析についてはペプチドプロトンの帰属・同定中である。また、業者での在庫が少なく入手待ち状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
トレハロースと芳香族アミノ酸およびモデルペプチド(Aβ40)との相互作用について、NMR法による解析および計算シミュレーション(分子動力学シミュレーション)による解析を継続して行う。また、トレハロースとモデルペプチド(Aβ40)とのQCM法による相互作用解析(結合様式の確認、結合定数の算出など)を実施し、熱力学的解析を行う。 東工大櫻井教授より、疎水性アミノ酸の水に対する溶解度の変化と安価な酵素タンパク質(例えばリゾチームなど)の凝集抑制作用のモデル実験を提案された。 アルツハイマーモデル動物(老化促進マウスなど)へのトレハロース投与実験を行い、トレハロースによるタンパク質凝集抑制作用が生命現象に及ぼす影響を立証する。具体的には病理マウスの脳の組織学的解析(脳の病理標本を作製し、免疫染色法によるアミロイド凝集タンパクの解析と顕微鏡赤外レーザー分析法(顕微FTIR法)による脳内トレハロースのマッピング解析を行う。
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Causes of Carryover |
トレハロース誘導体(酸化トレハロース、トレハロース脂肪酸エステル)の合成依頼のため。モデルペプチドβアミロイドタンパク(Aβ)の業者での在庫が少なく入手待ち状態であるため。 所属機関変更による環境整備のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
NMR解析用試薬類、QCM解析試薬類、実験器具代(約300千円)、分子動力学プログラム起動用ソフトWinmostar(60千円)、モデルぺプチド(Aβ40)合成費用(約500千円)、トレハロース誘導体合成費用(約300千円)、学会参加、東工大櫻井教授との打ち合わせのための旅費など(4回分、約200千円)
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