2014 Fiscal Year Research-status Report
震災後に造成される海岸林の生物多様性を考慮した保育技術の開発
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25450202
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
林田 光祐 山形大学, 農学部, 教授 (10208639)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海岸林 / 津波 / 攪乱 / クロマツ / 天然更新 / 植生 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年東北地方太平洋沖地震津波により海岸林は壊滅的な被害を受けた。津波によって被害を受けたクロマツ林の植生がその後どのように回復するのかを明らかにすることは、今後の海岸林の再生を考える上で重要と考えられる。そこで、津波という大きな攪乱が海岸林を含む砂浜の生態系にどのような影響を及ぼしたのかを明らかにすることを目的として、津波攪乱3年後の海岸林の植生回復の現状を調べるとともに、クロマツの天然更新の実態とその要因を明らかにすることを目的に仙台平野の海岸林で調査を行った。 仙台平野に位置する津波被害を受けた海岸林134林分345haを対象に、100㎡に 50本以上のクロマツまたはアカマツの稚樹が存在する場所が1か所でもある林分をマツ稚樹が多い林分として踏査したところ、20林分(69ha)が多い林分と判別できた。これらの林分は林齢や汀線からの距離などの特定の条件を有する林分ではなかったが、傾斜木として生残していたマツの被度が高い林分で稚樹が多い傾向が認められた。そこで、稚樹が多い3林分を対象に、汀線に垂直な帯状区を4か所設置し、マツ稚樹のサイズ、樹齢、成長量等を計測した結果、3か所では9割が津波前に発芽したクロマツ稚樹であった。これらの津波前に発芽した稚樹の分布は津波前の林冠ギャップの分布とほぼ一致したことから、津波前に定着していた稚樹が津波後にも生残できた林分で良好な天然更新が見られると推察された。これらの稚樹の多くはこの2年間の成長が良好であることから今後成林する可能性が高い。 調査地である3林分ともに汀線からの距離にかかわらず、砂浜海岸特有の植生の回復が確認できたが、同時にニセアカシアなどの外来種の侵入も多く見られたことから、今後の推移に注意が必要と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仙台平野で造成されている植栽基盤の盛土は山砂(マサ土)を材料に使用しているため、新たに造成された海岸林での調査が困難であったことから、造成されていない被災海岸林において、天然更新したクロマツの実態とその要因を明らかにすることとした。その結果、クロマツの天然更新の現状が把握でき、多くのクロマツ稚樹が津波前に発芽定着していた個体であることと、その分布や密度は被災前のクロマツ林分の構造に影響されていることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はこれまで実施してきた被災海岸林の植生回復の継続調査を実施するとともに、新たに造成された異なる植生基盤の試験地での植生回復の違いを明らかにするための調査を実施する。また、今後の保育技術を検討するために、日本海側の海岸林で実施されているクロマツ海岸林での林床処理(落葉掻き)が植生の多様性に及ぼす影響を明らかにして、当該研究の最終目標を達成する予定である。
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Causes of Carryover |
新たに盛土で造成された海岸林での調査を行わずに、まだ造成されていない海岸林を調査対象にしたため、調査回数が当初の予定よりも少なくなり、旅費が少なくすんだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は新たな造成地での調査に加え、日本海側の海岸林における保育技術に関する調査が加わることから、それらの旅費を持ち越した額でまかなう予定である。
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Research Products
(2 results)