2014 Fiscal Year Research-status Report
先史時代における有用樹種クヌギおよびイチイガシの遺伝構造
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25450206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 陽子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (00302597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒河内 寛之 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 助教 (00609000)
井出 雄二 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90213024)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝構造 / どんぐりピット / 葉緑体DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
有用樹木の遺伝構造は、自然のプロセスである進化や種分化、分布変遷のみならず、人間による種苗移動や栽培化により形成される。クヌギやイチイガシは日本列島において人間により食料や道具として長期間利用されてきた。したがって人間による種苗移動により遺伝構造が自然のプロセスのみを経たものとは異なる可能性がある。この2種は先史時代の遺跡から堅果が発掘されるため、その堅果のDNA分析により先史時代の遺伝構造を明らかにすることが可能であると考えられる。そこで本研究ではこの2樹種について、先史時代の遺伝構造を明らかにし、現在の遺伝構造と比較することにより、現在の両種の遺伝構造に対する人為的影響の有無や現在生育している個体の由来を明らかにすることを目的とする。 本年度は、クヌギおよびイチイガシの現生の遺伝構造を、昨年度用いたマーカーでは識別できなかった集団も識別が可能になるように次世代シーケンサーを用いた葉緑体DNA解析を行い、イチイガシについてはさらに詳細な遺伝構造を解析できる遺伝情報を得ることができた。 一方、クヌギにおいても次世代シーケンサーを用いて葉緑体DNAシーケンスの判読を行い、識別可能領域を抽出中である。 さらに、山口県教育庁文化財課から縄文時代のイチイガシサンプルを15サンプルお借りしてDNA抽出およびPCRを試みた。しかし、いずれのサンプルからもDNAのPCR増幅をできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現生の遺伝構造については、クヌギおよびイチイガシともに順調に明らかにすることができている。また、最も難しいと考えていた縄文時代のサンプルの入手も、少なくはあるが協力してくださる方々のおかげで可能であった。 一方、植物遺体からの古代DNAの抽出と増幅は、想像していたよりも困難であり、これまで従来のCTAB法やコンタミネーションを避けるため植物キットでの抽出、土壌キットでの抽出など様々な手法を試みたが、成功しなかった。 現在、次世代シーケンサーを用いて、微量であっても分析できないか試行錯誤中である。 以上のように、古代DNAの分析が成功していない点からやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず、第一に古代DNAの分析を可能にする技術開発に注力したい。上記のとおり、次世代シーケンサーを用いて解析が可能になるかどうか、可能性を追求したい。また、同時に、縄文時代のサンプルを提供してくださる組織をさらに探索し、より良い状態のサンプルを入手したい。 現生のイチイガシの遺伝構造については、今年度開発した領域をマーカー化して、分析個体数を増やし、より詳細な遺伝構造を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
植物遺体からの古代DNAの抽出と増幅の結果が不良であった。そのため、研究段階が、古代DNAの抽出と増幅を可能にするための試行錯誤の段階で停滞しており、多くの試料の分析をすることができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は古代DNAの抽出と増幅を可能にするため、次世代シーケンサーでの分析方法を改良する予定である。次世代シーケンサーでの解析は費用が掛かるため、次年度使用額はこれに充てる予定である。 また、より状態の良い植物遺体を入手するために、国内数か所の博物館や考古学資料館を来訪し、試料の貸与を依頼する予定である。 さらに、クヌギ、イチイガシについて、現生の遺伝構造をさらに詳細に明らかにするため、今年度次世代シーケンサーで解析し、マーカー化できる領域について、解析を進める予定である。
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Research Products
(2 results)