2014 Fiscal Year Research-status Report
皆伐・利用間伐量の都道府県別積み上げによる国産材生産量予測モデルの開発
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25450207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣嶋 卓也 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (40302591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿又 秀聡 独立行政法人森林総合研究所, 林業経営・政策研究領域, 研究員 (00353649)
中島 徹 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10598775)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 間伐 / 新基本計画 / 人工林 / 搬出 / LYCS |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は都道府県別皆伐量・間伐量推定モデルを完成し,いくつかのシナリオに従いシミュレーションを行った。 ・間伐モデル 47都道府県より,民有人工林の2003-2012年の間伐に関する,補助事業資料,HP公表資料を収集し,間伐面積・材積を県別,年度別,齢級別,搬出・伐捨別に集計した。つぎに県別の齢級別間伐面積を得るために,26道府県の2008-2012年の齢級別間伐面積をクラスター分析で14グループに分けた。そして他の21都県を判別分析で14グループに分け,各都県に各グループの平均齢級別間伐面積を与えた。こうして47都道府県の齢級別間伐面積を得た。つぎに県別の間伐材搬出率を得るために,27道府県の2012年の間伐材搬出率を被説明因子,社会経済因子を説明因子として重回帰分析を行った。そして得られた回帰式より,他の20都県の間伐材搬出率を社会経済因子より予測することにより,47都道府県の間伐材搬出率を得た。つぎに県別に2020年の搬出間伐材積を予測するために,シミュレーションを行った結果,2020年に①総間伐面積を2010年水準44万haまで増加,搬出率を現状維持とした場合,間伐材利用量は現状の1.4倍となり,②総間伐面積を現状の2倍65万haまで増加,搬出率を全県で70%とした場合,間伐材利用量は現状の3.0倍となり,②の場合に間伐量については,「2020年素材生産量3,900万m3」の目標達成が見込まれた。 ・皆伐モデル 昨年度までに完成したモデルを使いシミュレーションを行った結果, 2011年までの過去10年の実績として,年5%ずつ長伐期化が進んでいたことが示唆された。そして上記目標達成には,皆伐量を2020年までに現状の1.6倍とする必要があり,これを実現するには,過去10年で長伐期化が進んでいた主伐傾向を2020年までは年5%ずつ短伐期化するといった策が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つのサブモデルにおいて,昨年度未達であった事項と今年度計画されていた事項は以下の通り概ね達成された。 1.間伐材利用率推定モデル(達成度100%): 県別の平均傾斜角,林道密度,地位指数等の地形因子および,林業労働力,造林補助金,高性能林業機械台数等の社会経済因子について過去から最新時点までの可能な範囲で時系列データを収集(達成),県別の間伐材利用率を被説明変数,先の県別の地形・社会経済因子を説明変数として間伐材利用率推定式を求める(達成),間伐材利用率について,地域別に2020年までの時系列変化を見込んで試行シナリオを作成(達成)。 2.林分収穫表予測モデル(達成度100%): システム収穫表LYCSより地域別・主要樹種別に地位1と3についても標準間伐シナリオの副林木収穫表を作成(達成),地位指数分布をLYCS地位分布に読み替えて地位分布を考慮した樹種別副林木収穫表を作成(達成)。 3.伐採予測モデル(達成度85%): 26道府県から近年の間伐データを収集(達成),先の26道府県の齢級別間伐面積を14グループに分類する(達成),他の21都県を社会経済因子より先の14グループに分類(達成),26道府県では収集データの間伐面積,21都県は各グループの平均間伐面積を計算(達成),間伐面積について,2020年までの時系列変化を見込んで試行シナリオを作成(達成),間伐面積および間伐材利用率の試行シナリオに応じて,国産材生産量を算出しこれらの中から2020 年に3,900万m3 の目標達成が可能なシナリオの組み合わせを見いだす-2020年に2012年比で間伐面積1.8倍,利用率全県70%で達成(達成),径級別生産量を算出し製材用,パルプ・チップ用,合板用といった用途別の内訳を提示(未達-モデルの設定変更により取りやめ)。
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Strategy for Future Research Activity |
・間伐モデルシナリオの精緻化 間伐面積,間伐材利用率について,地域別に2020年までの時系列変化を見込んで複数のシナリオを作成する。①趨勢シナリオ:地域別に過去の傾向をそのまま延長するシナリオ(2012年から2020年にかけて×Z倍という形式),②緩やかな林業振興シナリオ:地域別に過去の傾向を考慮して現実的な範囲で2012年から2020年にかけて×Z倍するシナリオ,③新基本計画達成(利用量3倍)のシナリオを見いだすために,面積と利用率について2012年比で0.5倍~2.0倍まで0.1刻みで地域別に変化させ,総当たりで利用量3倍を達成できる組み合わせを見いだす。 ・皆伐モデル・間伐モデルと精緻な予測シナリオによる国産材生産量予測シミュレーションの実行 上記精緻シナリオにもとづくシミュレーションを実行し,2020 年に国産材生産量3,900万m3 の目標達成が可能なシナリオの組み合わせ(林業施策)を見いだす。
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Causes of Carryover |
・外国旅費を廃止し国内旅費へ振り替えたが国内旅費の執行が計画よりも低く済ませられた 研究計画時に予定していた国際学会への参加を取りやめ(大会参加費が予想以上に高く,航空機代と合わせると外国旅費配分予定額を大きく逸脱するため)外国旅費配分予定額を国内旅費と物品費に振り替えた。そのうちとくに国内旅費について,研究打ち合わせや国内学会発表では計画通りに予算を執行したものの,間伐データや社会経済因子の収集のため,各自治体へ出向く必要があると想定して国内旅費を積算した分について,実際には,直接出向かなくとも,担当者との電子メールや郵送によるやりとりでデータを入手できるケースが多く,執行額が計画よりも低く済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に引き続き,主要自治体を対象に過去10年以上にわたり収集した膨大な社会経済データ,地形データ(GISデータ),間伐データを管理するための,コンピュータ維持費用(メモリ,ハードディスクの増設等),データベースソフトウェアライセンス費用等に当初計画以上の出費が見込まれ,次年度はこれら使用額を,主に物品費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)