2013 Fiscal Year Research-status Report
安全性の高い界面活性剤を用いたスギ花粉形成抑制技術の確立
Project/Area Number |
25450219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小塩 海平 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (50318177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平塚 理恵 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30246376)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スギ花粉症 / 花粉飛散防止 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
非イオン系界面活性剤であるソルビタントリオレートがスギ雄花の選択的褐変に及ぼす影響について、異なるクローンにおける効果の発現について比較した。これまで効果の出やすいことがわかっている「新治2号」と効果が出にくい「くもとおし」および「沼田12号」、を移植し、6月にジベレリン処理を行い、雄花の着生が観察され始める8月末にソルビタントリオレート処理を行い、雄花の褐変過程を電子顕微鏡などで観察した。 その結果、「新治2号」では雄花の分化期が8月下旬であるのに対し、「くもとおし」および「沼田12号」は雄花の分化開始が1ヶ月ほど早く、8月下旬のソルビタントリオレート処理時期における花粉形成ステージの違いが、雄花褐変に影響を及ぼしていることが推察された。「くもとおし」や「沼田12号」であっても、雄花の分化直後にソルビタントリオレート処理を行えば、雄花の褐変率を大幅に高めることが出来ることが明らかとなった。したがって、複数種のクローンによって形成されているスギ林でソルビタントリオレート処理を行う場合は、雄花の分化が観察され次第、複数回に亘って、処理を行うことが有効であると考えられた。 また、顕微鏡観察により、「くもとおし」とよび「沼田12号」では雄花の表皮に界面活性剤の浸透しにくい層があることが電子顕微鏡観察の結果明らかとなった。これらの層は、花粉母細胞が観察される時期以降に形成されるため、ソルビタントリオレート処理はそれ以前に行うことが肝要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スギ苗を数カ所から移送して東大田無演習林で実験を行っているが、順調に活着し、当初予定していた実験をほぼ行うことが出来、クローンによるソルビタントリオレート処理の効果の差違に関しても、作用機序についておよその見当をつけることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度に得られた結果を再確認するとともに、「くもとおし」や「沼田12号」の雄花で形成される界面活性剤の透過を妨げる層について、検討を行う予定である。 またソルビタントリオレート処理によって誘導される雄花のプログラム細胞死のメカニズムに関する研究は、今年、メタボロームおよびトランスクリプトーム解析を行う予定であり、すでに試料の一部を冷凍保存中である。 ソルビタントリオレート処理によって雄花を褐変・枯死させることにより、スギの生育にどのような影響を及ぼすのかについての調査に関しては、渡口真一氏の協力を得て、現在実験用の苗木を120本養生中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スギ雄花の褐変過程におけるメタボロームおよびトランスクリプトーム解析を行う予定であったが、サンプルの前処理に時間を要し、代謝産物およびDNAの抽出作業が年度をまたぐことになり、抽出試薬の購入に関して、次年度使用額が生じてしまった。 メタボロームおよびトランスクリプトーム用の試料の調整が終わり次第、抽出試薬を購入し、実験を行う予定である。
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