2015 Fiscal Year Annual Research Report
カラマツ類の樹皮における二次代謝物と組織による化学的防御戦略の解明
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25450221
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
関 一人 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林産試験場, 主査 (20446313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折橋 健 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林産試験場, 研究主任 (60446292)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 針葉樹 / 樹皮 / 化学的防御 / 二次代謝物 / 栄養物質 / 生合成 / 量的遺伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
◆カラマツ類[グイマツ(G1×G1家系)、カラマツ(L1自然交配家系)、グイマツ雑種F1(G1×L1家系)]の内・外樹皮における主要二次代謝物(テルペノイド、フラボノイド)および栄養成分(非構成性糖類、タンパク質)の組成および含有量を明らかにした。また、カラマツ類の主要な病虫獣害に関する文献および樹皮における二次代謝物の分布状況から、各病虫獣種に対して防御対応する二次代謝物を推定した。樹皮内の樹脂道・樹脂嚢の面積・密度を調べ、樹脂嚢は外樹皮に偏在することが示された。また樹脂嚢やそこに含まれるテルペノイドの偏在が、樹皮の形成機構に影響を受けていると推定した。◆二次代謝物の生合成経路に基づきテルペノイド、フラボノイドの単位量の生成に必要なエネルギー物質(ATP、NADH等)量を算出し、前者の方が後者よりも多くのエネルギー物質を必要とすることを明らかにした。本結果とカラマツ類の樹皮における二次代謝物の含有量から、グイマツ、カラマツ、F1樹皮におけるテルペノイドとフラボノイドの全量合成に必要なエネルギー物質量を算出した。グイマツは、カラマツと比較して二次代謝物の生合成に多くのエネルギーを要しており、化学的防御のコストが高いと判断された。また、グイマツではテルペノイドを死滅組織である外樹皮に偏在させているが、これによりグイマツ生組織における被毒を防ぎ、貯蔵コストを低減させる観点から合理的と推察された。◆グイマツとカラマツの自然分布域にはそれぞれ異なる外敵(植食性昆虫・動物、樹病菌など)が生息しており、これらの外敵に対してグイマツは、生合成コストは費やすがテルペノイドを優勢に合成し、これを外樹皮により集積させ、貯蔵コストを抑えながら抵抗する防御戦略を進化させたと推定された。一方、カラマツではフラボノイドを優性に合成し、生組織である内樹皮に多く集積させて抵抗する防御戦略を進化させたと推定された。
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