2013 Fiscal Year Research-status Report
シカの採食が森林植生に及ぼす不可逆的変化のプロセスの解明
Project/Area Number |
25450222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
明石 信廣 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 林業試験場, 研究主幹 (40414239)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シカ / 森林動態 |
Research Abstract |
2009年から2011年までの2年間に北海道内19地点において取得した稚樹数や稚樹の樹高成長に関する野外調査データと、2012年に集計された調査期間中のシカの生息状況に関する指標を用いて、シカの生息状況と稚樹の動態との関係を解析した。稚樹の樹高成長と小径木・稚樹の本数の増加率は、ライトセンサスによるシカ目撃数が多いほど低下し、積雪の多い空知地方よりも積雪の少ない胆振・日高地方で減少傾向が顕著であった。 2009年に開始した、北海道新得町及び由仁町におけるシカの食痕調査を継続した。この調査では、シカが採食可能な地表から高さ2mまでの空間を高さ0.5mごとに分け、稚樹個体ごとに、高さごとの採食対象となる枝葉の有無及び食痕の有無を記録している。新得町の2箇所の調査区では、2013年春にアオダモ等に剥皮が多く発生し、稚樹本数も激減した。由仁町でも稚樹の減少傾向が続いていた。 これらの結果から、シカの採食による林床植生の衰退過程のデータが得られた。 奈良県・大台ヶ原に申請者らが1993 年に設定した調査区(調査区の一部に2003 年に防鹿柵設置)は、設定時には高密度にスズタケが生育していたが、1990 年代後半にスズタケが枯死し、林床植生の状態が大きく変化されるとともに、シカによる剥皮等によって樹木が減少する過程と、スズタケの消失後、防鹿柵内において樹木が回復する過程が連続して記録されている。この調査区において、2013 年秋に毎木調査を行った。柵内ではカマツカやリョウブなど一部の低木種の本数が回復し、1993年には記録されなかったタラノキやキハダが新たに出現した。しかし、スズタケの回復はほとんどみられず、高木、亜高木の樹種は本数の減少が続いていた。柵内の植生変化が一様でなかったことから、得られたデータを今後解析し、防鹿柵設置による植生回復過程のパターン化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り現地調査を実施し、目的達成および次年度以降の継続調査実施のためのデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
シカの採食による稚樹への影響は、複数年にわたる採食によって稚樹が枯死したり、採食状況が年によって異なるなど、継続して調査を行う必要がある。そのため、森林におけるシカの採食特性と稚樹の反応について、調査を継続する。 昨年度までの現地調査で得られたデータを解析し、シカの影響による森林の衰退と回復過程について、とりまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね計画通りに使用したが、端数を次年度使用額とした。 現地調査に必要な消耗品等の物品費として使用する。
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