2014 Fiscal Year Research-status Report
広食性捕食寄生者における学習能力を利用した寄主選好性の人為的操作
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25450225
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
浦野 忠久 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 主任研究員 (60353603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金崎 秀司 愛媛県農林水産研究所, 果樹研究センター, 主任研究員 (90504209)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サビマダラオオホソカタムシ / 寄主選択 / 学習 / 生物的防除 / カミキリムシ / 樹木穿孔性害虫 / オルファクトメーター |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続きサビマダラオオホソカタムシを①マツ-マツノマダラカミキリ系、②カンキツ-ゴマダラカミキリ系そして③イチジク-キボシカミキリ系の3通りの樹種-寄主種系で飼育し、これらに関してY字管オルファクトメーターを用いた寄主選択試験を行った。昨年度問題となった羽化後の成虫が不活発で反応が得られなかった件に関しては、実験室内の光環境を変えることで改善された。羽化直後の成虫に関しては、3種類の寄主フラスいずれにおいても、幼虫期に周囲に置かれていたフラスの匂いを避けるか、あるいは選択しない傾向があった。しかしその後飼育容器内に寄主フラスを入れた状態で約2か月間飼育した後に再び試験すると、学習した匂いを選択する個体が増加した。 愛媛県農林水産研究所果樹研究センター構内にゴマダラカミキリ幼虫を穿入させたカンキツ苗木を植栽し、2014年5月にフラスの匂いを学習させたサビマダラオオホソカタムシ成虫を放飼した。7月中旬に回収し割材した結果、原因不明の死亡個体は見られたものの、サビマダラオオホソカタムシによる明らかなゴマダラカミキリへの寄生は確認できなかった。原因としては、今回使用したカンキツがポット苗であったことによる、主幹上の放飼成虫定着場所の不足、および成虫放飼時期を5月下旬および6月上旬としたことにより、ホソカタムシ孵化幼虫の発生時期には既にゴマダラカミキリの羽化が進んでおり、寄生のタイミングを逸した可能性のあることが考えられた。この2点が次年度の野外放飼試験おける検討項目となった。 次年度の放飼試験の準備のため、愛媛県松山市内のカンキツ成木12本の枝60本に網掛けをしてゴマダラカミキリ雌成虫を内部に放ち、産卵させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度のY字管オルファクトメーターを用いた寄主選択試験において指摘された問題点が、技術的な原因によることが判明したことにより、26年度は実験の効率が格段に高まった。それによってサビマダラオオホソカタムシの寄主選択に対する寄主フラスの匂いの効果をある程度示すことができたため。また、カンキツ苗に対するサビマダラオオホソカタムシ成虫の予備的な放飼試験は、寄生なしという結果に終わったものの、27年度に実施する成木を用いた成虫放飼試験に向けての改善点を抽出することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Y字管オルファクトメーターを用いた寄主選択試験を引き続き実施する。27年度は低温処理終了後の産卵時期に達した成虫が、寄主フラスの匂いに対する学習効果を保持するかどうかを主として確認する。また、愛媛県松山市内のカンキツ成木12本(ゴマダラカミキリ穿入)の内5本を学習個体放飼区、5本を無学習個体放飼区、残り2本をコントロール(放飼なし)とし、あらかじめ室内でゴマダラカミキリによるカンキツフラスの匂いを学習させたサビマダラオオホソカタムシ成虫と無学習の成虫をゴマダラカミキリの穿入木に放飼し、カミキリに対する寄生率を調査する。以上の結果からサビマダラオオホソカタムシの異なる寄主種に由来するフラスの匂いに対する学習により新たな選好性を獲得、強化する能力について評価するとともに、本種を用いた野外におけるカミキリムシ防除の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
研究分担者は、課題開始初年度は所属機関の会計上の理由から連携研究者として登録されており、2年目(26年度)より分担者となった。したがって2年目、3年目の分担金を当初の計画では十分に確保できておらず、次年度の分担金にあてるための予算を今年度予算より繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金を研究分担者予算として野外放飼試験にかかる経費に使用する。
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Research Products
(1 results)