2015 Fiscal Year Research-status Report
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25450233
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
山崎 一夫 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (30332448)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植食性昆虫 / 植物 / 防御 / 風 / 受動的な動き |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 風による葉の受動的な動きに植食性昆虫による食害を減らす効果があるかどうかを、野外でカロリナポプラの葉をワイヤで固定して動きにくくしてコントロールより食害が増加するかどうかにより検討した。葉面積消失は極めて少なく差が出なかったが、葉を固定するとアブラムシの増殖率が増加する傾向が認められた。 (2) 山梨県の山地で、風により揺れやすいヤマナラシとそうでない近縁種ヤナギでの食害を比較した。ヤマナラシの方が葉が食害されにくい傾向があった。 (3) 植物の受動的な動きは植食性昆虫の摂食や他の行動を抑制すると考えられるが、植物の動きに対する反応は植食性昆虫の種によってさまざまである可能性がある。そこで、1年目のデータにさらに追加して計35種のアブラムシで、息と振動に対する反応を調査した。単純な落下は、草本植物のアブラムシが多く、樹木食のアブラムシではオオアブラムシなどの歩行能力が高い大型種に限られていた。樹木食のアブラムシは、とくに若齢期は落下を防止していることが示唆された。このことからも、葉の動きによる昆虫の落下は重要な選択圧になっていることが分かる。 (4) 樹木において、落下は植食性昆虫にとって致命的であるが、そのルールに反する興味深い例を見出した。キバガの一種において、幼虫が風に乗って葉とともに落下して植物の防衛や天敵を回避する行動が確認された。これは風による葉の動きを逆に利用する戦略があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は葉の固定実験を、ややサンプルサイズ不足ではあるが順調に行うことができた。また、野外でのヤマナラシとヤナギの食害比較データを得ることができた。アブラムシの振動に対する反応もデータを追加できた。また、新たなテーマとしてキバガの落下を発見することができた。今後、各データの量を増やす必要はあるが、ほぼ順調に進行していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 葉の固定実験を今年も反復して行い、昨年度の結果の一般性を確認する。 (2) ヤマナラシとヤナギの食害比較も続けてデータを取って検討する。 (3) 振動に対するアブラムシの反応のデータも追加し、60種を目標とする。 (4) 樹木からの落下行動を示すキバガの生態、行動を詳細に観察する。 (5) これらのデータをまとめて学会講演と論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
野外に設置するデータロガーと統計解析ソフトを購入しなかったことにより生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
風力計、風速計などの測定機器を野外調査用に購入する。また、データが蓄積されたので、統計解析ソフトも購入して利用する。
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Research Products
(1 results)