2014 Fiscal Year Research-status Report
肉食性動物プランクトンであるポエキロストム目カイアシ類とヤムシ類の種生態
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25450257
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
上田 拓史 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (00128472)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肉食性動物プランクトン / ヤムシ類 / コリケウス科カイアシ類 / オンケア科カイアシ類 / 時空分布 / 経年変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2006年から継続している開閉式プランクトンネット(網目0.1 mmm)を用いた土佐湾内の3定点層別鉛直採集による動物プランクトン調査を2014年12月まで継続した。サンプルの分析はヤムシ類については2008年10月から2014年10月までの6年間のサンプルを分析して種別の経年変動を明らかにし,また2009年5月から2010年4月までの1年間の全サンプルについて発育段階別に分析し,種別の季節変動と鉛直分布を明らかにした。肉食性カイアシ類(コリケウス科とオンケア科のカイアシ類)については,2010年9月までのサンプルの分析を終えた。 ヤムシ類については,エンガンヤムシZonosagitta nagaeが最優占することが黒潮流域の群集組成の特徴であることを明らかにし,日本プランクトン学会の英文誌Plankton & Benthos Researchに報告した。また,種ごとの発育段階別季節変化から,成長に伴う減耗は発生初期に最も大きいが,小型の種は比較的減耗が小さいことを明らかにし,その結果を日本プランクトン学会(広島大学)で発表した。 肉食性カイアシ類については検鏡の終わった2009年から2010年にかけてのデータを用い,種別の季節変化と水平鉛直分布を解析した。その結果,季節変化は春型(4~5月),夏型(6~8月),夏秋型(8~10月)の3つに分けられ,水平分布は岸沖方向へ有意な偏りは見られなかったが,定点間の変動が大きくパッチ状分布が示された。鉛直分布では最優占種Ditrichocorycaeus affinis以外の優占種はほとんど100 m以浅の表層に分布が限られることが分かった。これらの結果は,高知大学大学院黒潮圏科学専攻が発行している学術誌『黒潮圏科学』に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の到達目標は,魚類資源に影響を及ぼす可能性が考えられる肉食性動物プランクトンについて詳細な生態情報を得ることにあるが,ヤムシ類については2014年度までに必要な情報はほぼ得られ,経年変化の除き成果発表もほぼ終わっている。 肉食性カイアシ類については,単年度のコリケウス科の季節変化や水平鉛直分布の情報を得られ,その成果発表も終わっている。オンケア科については,分類が近年見直されて種が細かく分類され,その分類に従って大量のサンプルを正確に種別に計数することは非常に困難になった。そのため,魚類資源との関係を分析するための必要最小限の情報として,優占種(Oncaea venusta)以外の種はサイズで分けて分析を進めており,そのデータはすでに2010年まで取得している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(最終年度)年は,未分析サンプルのデータ化と未発表成果の執筆に全力を投入する。未分析サンプルのデータは分析が終わったサンプルのデータと合せて経年変動を明らかにするためのものであるが,解析は変動要因としての環境データ(主に水温と黒潮流軸の位置)との相関分析を試みる。また,本課題の目標である魚類資源との関係については,土佐湾の各漁協が発表しているシラス漁獲高を調べ,その変動と肉食性動物プランクトンとの相関の有無によって肉食性動物プランクトンが魚類資源の及ぼす影響について結論を下す予定である。 成果発表については,ヤムシ類の経年変動については英文誌へ,オンケア科カイアシ類の時空分布生態については『黒潮圏科学』への投稿を予定している。肉食性カイアシ類全体の変動要因や魚類資源との相関については年度末の海洋学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は,消耗品の購入に一部変更があったため少額の金額が残ってしまったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度消耗品の一部として消化する予定である。
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Research Products
(3 results)