2015 Fiscal Year Research-status Report
沿岸性カイアシ類の再生産に対する餌料プランクトンの栄養学的影響
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25450262
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
山田 雄一郎 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (80458744)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | カイアシ類 / 動物プランクトン / 摂食 / 植物プランクトン / 卵生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦の亜寒帯から亜熱帯まで幅広い範囲の沿岸および内湾域に生息するカイアシ類Acartia steueriの再生産に与える餌料生物の影響について現場実験を用いて調査した。実験は2015年の秋季から冬季にかけて岩手県大船渡市の越喜来湾において行った。現場において採集した海水を透明ボトルに満たし、ここに同じく現場で採集したA.steueriの雌成体を5個体ずつ入れ(実験区)、海水のみのボトル(対照区)とともに現場の水深5mに24時間垂下した。その後ボトルを回収し、実験区のボトル中より産生されたA.steueriの卵を取り出し計数した。さらに両実験区の海水を濃縮し、、試料中の微細プランクトンを中心目および羽状目珪藻、渦鞭毛藻、少毛類および有鐘類繊毛虫、珪質鞭毛藻の6グループに分類しそれぞれ計数した。この計数結果より、A.steueriの各微細プランクトンに対する摂食速度を算出した。実験期間中のA. steueriの総産卵数は9月中旬が15個/雌/日と最も高く、10月に入ると2.2個/雌/日まで急激に減少し、以降は12月上旬まで0.2~2.8個/雌/日の範囲で変化した。1~3月には本種の出現は確認されなかった。本種の各微細プランクトンに対する摂食速度を比較したところ、渦鞭毛藻に対する値が最も高く、特に9月中旬には12.9細胞/雌/時と最高値を記録し、以降は12月上旬まで4.1~10.2細胞/雌/時の範囲で推移した。次いで少毛類繊毛虫に対する摂食速度が高く、9月中旬から12月上旬にかけて時間の経過とともに1.9から0.5細胞/雌/時まで緩やかに減少した。一方、中心目、羽状目珪藻、有鐘繊毛虫および珪質鞭毛藻に対する摂食はほとんど確認されなかった。以上のことから本種の主要な餌生物は渦鞭毛藻および少毛類であり、これらの増減が本種の摂食活性、さらには再生産規模に影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者はこれまでに沿岸性カイアシ類Eurytemora pacificaを用いて摂餌および産卵実験を行なってきたが、本種の数度にわたる大量へい死が発生し、十分に実験を行なうことができなかった。さらに、餌料として用いた微細プランクトン中に含まれる脂肪酸測定に使用する機器(ガスクロマトグラフィー)が故障し、修理に時間を要したため、本項目についても十分な結果を得ることができなかった。したがって、全体の達成度はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在では実験に使用するカイアシ類をEurytemora pacificaからPseudodiaptomus marinasに変更し、安定した継代飼育が可能になった。さらに脂肪酸分析に必要な機器の修理も完了した。今後は餌料プランクトンに含まれる化学的成分(脂肪酸およびアミノ酸)の詳細な分析を行ない、餌料生物がカイアシ類の卵生産規模に与える影響に関してより詳しく調べる予定である。
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Causes of Carryover |
研究に供する実験用生物の大量へい死および実験機器の故障により、当初予定していた研究内容を遂行することができなかったため、当該金額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、前年度実施できなかったカイアシ類を用いた室内摂食実験および餌料生物の化学成分の分析を行うため、当該金額を使用する予定である。
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