2014 Fiscal Year Research-status Report
飼育ストレスが魚類腸管内のビブリオ科細菌に及ぼす影響
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25450263
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
杉田 治男 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50139052)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Vibrio科細菌 / 魚類 / 腸内細菌 / 細菌群集 / 定量PCR / クローンライブラィ / トラフグ / 養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の寒天培養法による解析では、海産魚類の腸管内ではVibrio科細菌が優占することが一般に知られている。しかし、近年の16S rRNA遺伝子に基づく細菌の分類体系の確立と分子生態学的手法の発展によって、培養することなしに細菌群集を解析することが可能となっている。それらの方法を用いることによって、1.培養できる細菌の多くは全菌数の数%以下であること、および2.海産魚類の腸管内にはVibrio科細菌を含むGammaproteobacteria綱のほか、Actinobacteria綱、Alphaproteobacteria綱、Betaproteobacteria綱などの細菌群が多数を占めることが判明した。しかし、従来の研究で優占菌と考えられてきたVibrio科細菌には海産魚類の日和見感染菌が多く含まれているため、魚類の日和見感染症の発症と腸管内でのVibrio科細菌の動態や飼育環境ストレスとの間に密接な関係があることが示唆されている。そこで平成26年度は、次年度に種々の飼育環境下でのトラフグ腸管内のVibrio科細菌の動態を解析するにあたり、飼育ストレスの少ない自然環境下での腸内細菌叢を把握する目的で、沿岸域および河川で採取したクサフグの腸内細菌叢について解析した。主な研究成果は以下の通りである。 1)16S rRNA遺伝子を標的として構築したライブラリーから、海水および河川(淡水)域で採取したトラフグ腸管の優占菌はともにEpsilonproteobacteria綱に属するArcobacter spp.であった。 2)Vibrio科細菌を標的として構築したライブラリーを解析すると、海水のクサフグではAllomonas属やVibrio属が、淡水ではVibrio属が優占した。 3)以上の結果からクサフグの優占腸内細菌叢は比較的安定していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行する上で、Vibrio科細菌を特異的に検出、定量できるPCRプライマーは大変重要であり、平成26年度の研究成果からもそのことが実証されている。また、実験に使用するトラフグの稚魚は春季にしか入手できないため、本年度はトラフグのほかに、ヒラメなどほかの養殖魚も対象として、飼育ストレスと腸管内のVibrio科細菌の動態について研究を実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
トラフグ稚魚のみを実験魚とすると春季しか実験ができないため、本年度はトラフグに加え、ヒラメなどほかの養殖魚も対象として、飼育ストレスと腸管内のVibrio科細菌の動態について研究を実施する。 主な計画は以下のとおりである。 1. トラフグまたはヒラメを種々のストレス実験条件で飼育し、腸管内および飼育水中の細菌数やVibrio科細菌数の変動を解析するとともに、Vibrio科細菌の動態をクローンライブラリー法などを用いて測定する。 2. Vibrio科細菌を増加する環境因子が判明した場合には、それらがVibrio科細菌の増加に及ぼすメカニズムについて詳細に調べ、ストレスとVibrio科細菌の関係について考察する。
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Causes of Carryover |
研究情報収集のため参加を予定していた平成27年度日本水産学会春季大会を都合により欠席したため、旅費(3,900円)を次年度使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度開催予定の平成27年度日本水産学会秋季大会などに参加するための旅費に充当する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Habitat use of the gnomefishes, Scombrops boops and Scombrops gilberti, in the northwestern Pacific Ocean, in relation to reproductive strategy2014
Author(s)
N. Takai, Y. Kozuka, T. Tanabe, Y. Sagara, M. Ichihashi, S. Nakai, M. Suzuki, N. Mano, S. Itoi, K. Asahina, T. Kojima, H. Sugita
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Journal Title
Aquatic Biology
Volume: 21
Pages: 109-120
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 16S rDNA-based metagenome analysis of microorganisms from Tilapia culture ponds in Thailand2014
Author(s)
U. Watanabe, H. Takeyama, M. Ito, T. Aoki, M. Hattori, W. Suda, J. Hikima, M. Sakai, H. Sugita, J. Wongtavatachai, M. Lukkana, S. Jantrakajorn, S. Unajak, M. Rapeepat, C.F. Lo, H.C. Wang
Organizer
平成26年度日本水産学会秋季大会
Place of Presentation
九州大学(福岡)
Year and Date
2014-09-21
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[Presentation] Maternal TTX in the pufferfish bobies contribute to beneficial strategies for increasing the survival of egg and larvae2014
Author(s)
S. Itoi, S. Yoshikawa, K. Asahina, M. Suzuki, K. Ishizuka, N. Takimoto, R. Mitsuoka, N. Yokoyama, A. Detake, C. Takayanagi, M. Eguchi, R. Tatsuno, M. Kawane, S. Kokubo, S. Takanashi, A. Miura, K. Suitoh, T. Takatani, O. Arakawa, Y. Sakakura and H. Sugita
Organizer
The 10th Asia-Pacific Marine Biotechnology Conference (2014 APMBC)
Place of Presentation
Academic Sinica, Taipei, Taiwan
Year and Date
2014-05-06
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