2014 Fiscal Year Research-status Report
魚類ノダウイルスの感染増殖における宿主の熱ショックタンパク質の役割解明
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25450274
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
冲中 泰 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (80363034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベータノダウイルス / Hsp / アイソフォーム / 熱ストレス誘導性 / ウイルス感染による誘導性 / ウイルスタンパク質の安定的合成 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
H25年度の研究では、検討したHsp70アイソフォームおよびHsp90アイソフォームのうち、ベータノダウイルス感染・増殖に重要であるのはHsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5、Hsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βであることが遺伝子過剰発現実験および遺伝子抑制実験により判明した。 本年度は、これらisoformの誘導性や発現レベルなどに関して検討を加えた。メダカ培養細胞(OLHNI-2)に一過性の熱(42℃)処理を行った後にベータノダウイルス接種を行うと、ウイルス増殖レベルがコントロール区の約5倍に高まった。同様に熱処理を行ったOLHNI-2細胞では、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5およびHsp90-α1、Hsp90-α2が誘導され、それら以外のisoformはほぼ恒常的な発現を示した。Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5およびHsp90-α1、Hsp90-α2は、ウイルス学的に重要と判明したisoformであることから、熱処理でこれらisoformの発現が誘導された結果、ウイルス増殖レベルが高まったという解釈が可能である。また、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp90-α1、Hsp90-α2はベータノダウイルス感染により誘導されることから、本ウイルスは自らの増殖の為にこれらisoformの発現を誘導する可能性も示唆された。 Hspはタンパク質の安定化に関与するシャペロンタンパク質であり、ほ乳類ウイルスや昆虫ウイルスの報告と同様に、本ウイルスタンパク質の安定的合成にも寄与する可能性が高い。そこで、Hsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5、Hsp90-α1、Hsp90-α2、Hsp90-βがどのウイルスタンパク質と直接相互作用するかを調べるため、酵母Two-Hybrid Systemを用いてスクリーニングを行った。その結果、ベータノダウイルスタンパク質のうちprotein B2はHsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5それぞれと相互作用を示した。その中でもHsp70-5との相互作用が最も強かった。それ以外のウイルスタンパク質およびHspアイソフォーム間の相互作用は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hsp70およびHsp90に属する各アイソフォーム遺伝子の熱ストレス誘導性実験およびウイルス感染による誘導性実験を本年度内に終えた。また、ベータノダウイルスの感染・増殖に重要な各アイソフォームと相互作用するウイルスタンパク質の同定も終えた。よって、次年度への持ち越しはなく、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
Protein B2と相互作用を示すことが判明したHsp70-1、Hsp70-2、Hsp70-5は、メダカ培養細胞(OLHNI-2)においてそれらの過剰発現や発現抑制を行い、発現レベルが当該ウイルスタンパク質の合成レベルと相関するかを検討する。この結果から、最終的にHsp誘導→ウイルスタンパク質の合成促進→ウイルス増殖促進、という一連のウイルス学的シナリオが完成する。 方法は、まずH25年度の研究と同様の方法で、OLHNI-2培養細胞内でHspアイソフォーム遺伝子の過剰発現処理および発現抑制処理を行う。次に、これら細胞にpCI-neoにクローニングしたウイルスタンパク質遺伝子を導入し、その発現を促す。その後、細胞の総タンパク質を回収し、ウェスタンブロッティング解析により、当該ウイルスタンパク質の増減レベルを調べる。
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Causes of Carryover |
H26年度に計画していた各Hspアイソフォームの熱ストレス誘導性実験およびウイルス感染による誘導性実験が順調に終わり、試薬類の購入が少額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度の当初予算は予定通りに使用し、繰り越された残額分はH26年度に得られた特筆すべき研究成果の発表機会を増やすために使用する。
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