2016 Fiscal Year Annual Research Report
Effect of unnatural sex ratio on viability of a harvested population
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25450282
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
千葉 晋 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (00385501)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性比 / 漁獲 / 甲殻類 / マイクロサテライトDNA / タラバエビ / 繁殖成功 / 個体群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、意図せずに雌だけが漁獲され、繁殖時の性比が不自然に雄に偏っているホッカイエビ(北海しまえび)を対象にして、そのような漁獲に起因した性比の歪みが本種の繁殖成功にもたらす影響を調べた。本年度は研究計画の最終年度として解析データを補完し、とりまとめを行った。 まず、雄に偏った性比が雄の繁殖成功へ及ぼす影響を調べた。ここでは、性比を操作した実験条件で繁殖させた雌のクラッチ(ひと腹に抱える卵)と野外で自然繁殖した抱卵雌のクラッチにおける父系(受精に関わった父親の数)をマイクロサテライトDNAマーカーを用いて調べ、性比とクラッチ内の遺伝的多様性の関係を明らかにした。飼育実験の結果から、ホッカイエビは多夫性(ひとつのクラッチの受精に複数の雄が関与する現象)を示し、繁殖時の雄の増加に応じてクラッチ内の父系も増えた。しかし、その増加はやがて頭打ちとなったため、性比が雄に偏りすぎると遺伝的多様性が減少すると推察された。野外調査の結果でも多夫性が確認されたものの、性比の変動に関わらず、クラッチ内の約80%が1個体の雄のみで受精されていた。この野外での低い父系は繁殖集団の密度の低さに起因すると推察された。 次に、雄に偏った性比が雌の繁殖成功へ及ぼす影響を調べるため、性比を操作した実験条件で雌を繁殖させ、抱卵率を比較した。その結果、繁殖時に雄が多いほど、雌の抱卵率は減少した。 これらの結果から、歪んだ性比の弊害を次のように推察した。(1)個体数密度が低いと繁殖機会のない雄が増え、逆に密度が高いと繁殖しても受精させられない雄が増えるため、いずれの場合も個体群の遺伝的多様性は減少しやすい。(2)繁殖相手となる雄の増加は過剰な交尾を誘発し、その結果、雌の産卵率を低下させる。したがって、漁獲に起因する性比の歪みは個体群増殖率の低下を招く要因になると結論付けた。
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