2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 館長 (20092174)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 魚病 / 寄生虫 / 単生類 / 養殖 |
Research Abstract |
ハダムシNeobendenia girellae(ネオベネデニア)の生態を利用して、養殖場での寄生を減らす飼育方法を開発するため、初年度はネオベネデニアの基礎的な生物学的知見を得るための実験を実施した。まず、本虫の産卵とふ化の日周リズムを自然光と人工明暗条件下で調べた。本虫の産卵は昼夜を問わず、1日中見られ、光を遮った暗黒条件下でも自然光と同程度の産卵があることが分かった。本虫は最高でおよそ毎分1個程度産卵し、成虫が77匹寄生している魚一尾から1日5万個以上の虫卵が産出される事がわかった。ネオベネデニアのふ化には明確な日周リズムが見られ、自然光下では1日1回、午前中にピークがあった。これは近縁別種であるブリハダムシのふ化は早朝と夕方の1日2回ピークがあるのとは対照的で、ハダムシのふ化の日周期は種によって異なる事が明らかとなった。しかし、LEDライトで12時間毎に電照した場合や、24時間照明もしくは暗黒条件でのふ化は自然光下に比べて少なく、本虫のふ化は太陽光の波長、もしくは徐々に明るくなったり暗くなったりという光条件によって誘引される可能性が示された。自然環境下でネオベネデニアの寄生を調べたところ、8:00~12:00の昼間に表層付近で最も多い事がわかった。この時間帯はふ化が最も多い時間と対応していた。また、寄生は海流の向きや強さによって大きく左右される事がわかった。ふ化幼生の行動を調べたところ、強い正の走光性が改めて確認されたが、白、赤、青、緑光の間で走光性の度合いに差は見られなかった。また、遮光シートで光を遮ると、寄生が7割程度減少したため、遮光による寄生抑制方法の開発に繋がる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた初年度の研究内容はほぼ達成することができ、次年度以降の研究に繋がる新しい知見も得られた。特に、新しいハダムシ防除法に繋がる実験結果が得られたため、今後はその実用化に向けてより詳細に研究を進める予定である。しかし一方、海水中のふ化幼生の定量方法についてはまだ確立されておらず、早急に実験を行う必要がある。また、研究連携者が異動になったため、当初予定していた魚の行動解析については基本的なデータを得たのみで、今後は新しい方法や研究方向を模索する必要がある。ただ、これらは研究の主目的を達成するためには大きく関係しないため、今後は若干の研究見直しをして、対応する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は遮光によるハダムシ防除法の確立に向けて、実際の養殖現場でより大規模な試験を行う予定である。また、その効果や現在の防除法との比較を行い、実用性の検討を行う。併せて、養殖場で得られたデータを裏付けるための室内実験や調査を行うが、そのために必要となる、海水中からのふ化幼生の定量方法を迅速に確立する必要がある。生け簀内での魚の行動調査については、ロガー装着技術を持つ研究連携者が異動となったため、実験実施の有無も含め、見直す必要がある。
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