2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25450284
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 和夫 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 館長 (20092174)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 魚病 / 寄生虫 / 単生類 / 養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
養殖場で問題となるハダムシNeobendenia girellae(ネオベネデニア)の生態を調べることで、寄生を未然に防ぐ防除法を確立するため、2年度目には初年度に得られた結果をさらに詳細に調べると共に、養殖場での野外実験を行った。まず、産卵日周リズムについては、昨年度はネオベネデニアが複数寄生した魚を用いたため、虫体1個体の産卵が不明確だという問題があった。これを、虫体をブラックモーリーに移植するという新しい手法で解決し、産卵リズムは寄生数によって大きく影響されない事を突き止めた。ネオベネデニアの虫卵は養殖生簀に絡まり易い性質があるため、養殖場で蔓延する。実際の生簀網への虫卵蓄積率と鉛直分布を調べたところ、多い時には生簀網4側面に1日1000万個以上の虫卵が蓄積すると試算された。蓄積した虫卵の50~80%以上は表層付近に集中していることが明らかとなり、虫卵の効率的な除去法の開発に繋がる知見が得られた。また、潮通しの良い場所に生簀を移すことで寄生を軽減できるかを調べるため、回流水槽を用いて、ネオベネデニアがどの程度の流速中で寄生可能か調べたところ、魚の飼育には不適当な50cm/sでも寄生が確認され、ふ化幼生が存在すれば潮流が速い海域でも寄生が起こる事が分かった。 これまでに実施した実験結果から、養殖場での寄生は午前中に多いことが分かったため、魚が寄生されやすくなるとされる淡水浴による駆虫作業の適切な時間を調べた。朝と夕方に淡水浴を行い、その後の寄生を比較したところ、当初の予想と反し、夕方淡水浴区での寄生が倍程度多かった。この結果から淡水浴の時間帯によって寄生状況が変化することが分かったが、その理由については明確でなかった。また、寄生は表層で多いという結果から、水深調整生簀でカンパチの飼育水深を4mにして寄生を調べたが、寄生抑制効果は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験はほぼ予定通りに進める事ができたが、結果が予想と反していたり、ポジティブな結果が得られない場合があったりと、成果に繋がる結果を得る機会が少なかった。しかし、これらはネガティブデータではあるものの、次への展開が期待される結果であった。生簀網上の虫卵分布については、表層付近に集中して蓄積する事が分かったため、これを応用した効率的な虫卵除去方法の開発に取り組む予定である。水深調整型生簀による実験は予定通り実施され、養殖場で実用的であることが示されたが、残念ながら寄生抑制効果は認められなかった。また予定していたハダムシふ化幼生の分布状況調査については生簀周辺海水の採取は既に行っており、これらを解析することでさらに知見が得られると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では養殖場での実用化に向けて、実際の飼育試験を行う。虫卵の効率的な除去方法によってどの程度被害が軽減できるか、といった評価をする予定である。また、ネオベネデニアが寄生しやすい条件を把握するためには、感染実験よりも、ふ化幼生の分布を調べる方が効率的であることが明らかとなった。そのため、海水中のふ化幼生を定量的に調べる定量PCR法の確立に向けて準備を進めている。生簀内の魚の行動調査については研究連携者の異動に伴い実験の実施が困難となったため、予定を変更し、寄生虫に的を絞った実験を行う予定である。
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