2013 Fiscal Year Research-status Report
種苗生産におけるグリーンウォーター技術の高度化と汎用性の強化
Project/Area Number |
25450286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
江口 充 近畿大学, 農学部, 教授 (40176764)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グリーンウォーター / ワムシ / 微細藻類 / ARISA解析 / 種苗生産 / クロマグロ / ナンノクロロプシス / 消化管内細菌叢 |
Research Abstract |
種苗生産で用いるグリーンウォーター(微細藻類培養液)の効果、特に養殖魚の腸内細菌群集に与える影響について調べるため、平成25年度はクロマグロを中心にその腸内細菌叢の解析手法の確立を試みた。 近畿大学水産養殖種苗センターすさみ事業場にて、2012年8月、2013年7月(以下、2013-1)および8月(以下、2013-4)に卵収容した完全養殖クロマグロが沖出しされるまでの種苗生産過程を対象とした。孵化日をDay 0としたときに、2012年はDay -1からDay 31、2013-1はDay -1から35、そして2013-4はDay -1から30までを対象期間とした。クロマグロ仔稚魚とあわせて、その飼育水および餌飼料も採取し、解析した。細菌叢の解析には、多様性解析手法の一種であるARISA(automated ribosomal intergenic spacer analysis: リボソーム遺伝子間スペーサー自動解析)を用いた。 2012年、2013-1および2013-4のいずれにおいても、クロマグロ仔稚魚の消化管内細菌は、種苗生産初期よりも後期の方が細菌種数が減少する傾向にあった。その種数は種苗生産初期には30種を超えることもあったが、後期には5~9種となった。一方、飼育水や餌飼料では、細菌が30種以上検出されることが多かった。餌飼料では同じワムシであっても検出される細菌種数は10~68種とばらつきがあった。2012年のクロマグロ消化管内細菌叢のSimpson多様度指数(1/D)、Shannon-Wiener多様度指数(H')および均衡度(E)は、飼育水や餌飼料細菌叢のそれらと比較して有意に低かった(p < 0.05)。しかし、2013-1および2013-4試料ではこの傾向は見られなかった(p > 0.1)。同じように養殖されたにもかかわらず、2012年、2013-1および2013-4において同様の傾向が見られなかったことは、クロマグロ種苗の安定的な供給と関連性があるのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種苗生産では微細藻類を飼育水に添加し、仔稚魚減耗の低減化を図る。これをグリーンウォーターと呼ぶ。ヒトをはじめとする哺乳類では、消化管内細菌叢がその健康に多大な影響を及ぼすことが示されている。魚類においても同様であり、この消化管内細菌叢をグリーンウォーターを用いて制御することが本研究の最終的なゴールとなる。 今までの研究成果から微細藻類のナンノクロロプシスの培養液では善玉菌(Roseobacter属細菌など)が増えて悪玉菌(Vibrio属細菌など)の増殖を抑制する可能性を確認してきている。このグリーンウォーター効果が実際に養殖魚の消化管内細菌叢にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするためには、消化管内細菌叢の解析手法を確立する必要がある。 本年度はクロマグロを中心に、消化管内容物を標的としてDNAを効率よく抽出・解析する手法の確立を第一の目標とした。その結果、ライソザイム-プロティナーゼK抽出法が最も有効であるという結論に達した。細菌叢の解析ではDGGE法よりも多様性解析手法の一種であるARISA法(automated ribosomal intergenic spacer analysis: リボソーム遺伝子間スペーサー自動解析)が有用であるという結論に達した。今後も本年度に確立した解析手法を適用してデータの蓄積を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
微細藻類のナンノクロロプシス培養液中には善玉菌(善玉菌(Roseobacter属細菌など)が増えて悪玉菌(Vibrio属細菌など)の増殖を抑制することは今までの研究から証明してきた。 本研究では種苗生産における、微細藻類(グリーンウォーター)⇒動物プランクトン(ワムシなど)⇒仔稚魚という一連の食物連鎖を利用して、種苗生産技術の向上を図る。グリーンウォーター技術の向上を目指すためにさらにデータを蓄積し、改善すべき点としては次の5点がある:1)グリーンウォーターとして用いる微細藻類の種類が未だ限定されているので微細藻類の種類を増やして比較検討する、2)解析に用いた悪玉菌の種類が未だ限定的であるためその種類を増やして検討する、3)微細藻類(グリーンウォーター)⇒動物プランクトン(ワムシなど)という食物連鎖の流れの中での飼育水中の細菌群集構造の解析データの蓄積が不足している(実際の生産現場での現状の把握の必要性)、4)仔稚魚の消化管内細菌叢の解析手法については平成25年度の研究からある程度確立できたが、魚種がクロマグロ(有胃魚)に限定されているため、他の養殖魚、例えばフグ(無胃魚)などについても解析し比較検討する必要がある、5)クロマグロの稚魚の成長に伴い細菌叢が単純化される傾向を確認したが、これが魚の成長に伴う生理的なものなのか、消化管内容物の増加と複雑化による人為的なものなのかを確認する。以上の5つの問題点について平成26年度は取り組んでいく。
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Research Products
(2 results)