2014 Fiscal Year Research-status Report
長期遺伝的モニタリングに基づくイワナの繁殖成功度および放流効果の推定
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25450290
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
山本 祥一郎 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (20392897)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イワナ / マイクロサテライトDNA / 繁殖成功度 / 放流効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
イワナ自然集団を対象とした野外調査を実施し、採集されたすべての個体についてイラストマー蛍光標識により個体識別を施し、さらに個体毎の遺伝子分析用組織を収集した。この調査は、申請者が2005年度より継続しているものであり、2014年度は606個体分のDNA分析用の試料を追加した。また、2005年~2007年の繁殖期に採集された成熟個体(2005年繁殖期、オス17尾、メス5尾; 2006年繁殖期、オス19尾、メス8尾; 2007年繁殖期、オス32尾、メス18尾)、2006年~2008年に採集された当歳魚について(2006年545尾、2007年198尾、2008年312尾)、昨年度新規に開発したマイクロサテライトDNAマーカー8遺伝子座(Yamamoto and Sekino 2015)を用いて親子判別をおこなった。親子推定にはプログラムColony (Wang and Santure 2009)を用い、最尤法により確率95%以上を親候補と判定した。その結果、各年度で次世代に子を残した個体の割合は、オスが3~47%、メスが6~100%と推定され、繁殖成功度に大きな個体差および年による違いが確認された。また、両性ともに、親魚の体サイズと繁殖成功度との間に明瞭な関係を見いだすことができなかった。このことは、競争能力が高く、またより多くの卵や精子をもつ大型の個体が必ずしも高い繁殖成功度をとげるわけではないことを示す。継代飼育魚の繁殖成功度を評価する移殖放流実験については、昨年度と同様の野外操作実験を水産総合研究センター内に設置した人工河川で継続しているころである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イワナ自然集団を対象とした繁殖成功度推定のための試料収集および遺伝子分析、養殖魚の繁殖成功度評価のための野外操作実験、ともに計画にしたがい順調に進捗している。また、昨年度開発したマイクロサテライトDNAマーカーがイワナの親子判別に適用できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
野外生態データ、およびDNAデータの蓄積を継続するとともに、これまでのデータをとりまとめ、天然魚各個体について繁殖成功度に影響する要因を検討する。また、継代飼育魚の次世代の貢献度を評価するために、人工河川に放流した天然魚と飼育魚の繁殖成功度を比較する。
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Causes of Carryover |
本年度1000個体をこえる検体について遺伝子分析を実施したが、これに必要とされる各種試薬を安価で購入することができ、また今年度予定していた調査・実験を非常勤職員の新規雇用なしに実施することができ人件費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に引き続き、イワナの親子関係を推定するための遺伝子実験試薬が多種・大量に必要であるとともに、これまでの成果を公表するための旅費が必要となる。
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Research Products
(2 results)