2015 Fiscal Year Annual Research Report
激減したマイワシ資源の3次元的な遺伝的多様性変化の解明
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25450292
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
柳本 卓 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究員 (30443386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梨田 一也 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究, 主任研究員 (10371882)
丹羽 洋智 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主幹研究員 (60372083)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝的多様性 / コアレセント解析 / 有効集団サイズ / マイワシ |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年および2010-2012年採取のマイワシmtDNA標本の20年間にわたる遺伝子頻度の変化のコアレセント解析から、有効集団サイズは630尾と推定された。この数値は実在個体数と比べ極端に小さく、標本個体が共通祖先に至るまでの長期平均値に比べ4桁小さい。これはマイワシ集団は20年間の遺伝的浮動が極めて大きく、遺伝的多様性低下が甚だしいことを意味している。現在、有効集団サイズが歴史的に極めて低水準にあるが、実在個体数は莫大である。多型性が集団のボトルネックによると仮定し、個体群動態をシミュレーションすると、標準コアレセント・モデルからはこの20年間に観測された小さな有効集団サイズは得られず、長期水準を維持する結果が得られた。マイワシ多型のBetaコアレセント解析から、この集団では親魚か次世代に残す仔の数のバラツキが極端に大きく、仔数分布がベキ則の裾を持つと推定された。再生産がベキ則分布に従うマイワシ集団の加入過程をシミュレーションし、加入量変動と遺伝的多様性変化を調べたところ、例外的に大きな加入(卓越年級)が間欠的に起こり、遺伝的多様性(有効集団サイズ)が大きく低下することが分かった。一方、平年並みの加入水準では際立った変化はない。卓越年級群の発生は少数の親魚が大きく寄与し、集団に例外的に繁殖成功度の高い親魚が存在することを意味する。有効集団サイズの長期と短期平均の極端な乖離は、膨大な数の卵を産むマイワシでは親魚が次世代に残す仔の数に極端な偏りが存在する証拠である。また、仔数分布の極端な偏りが卓越年級を生み出す。有効集団サイズは、絶滅危惧種にその保全に際し重要な指標となっているが、マイワシのように、大きな遺伝的浮動と相補的に大きな実在サイズを特徴とする海産魚介類には、繁殖生態や加入過程の把握に役立つことが期待され、保全生態学とは異なる観点から重要である。
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Research Products
(6 results)