2014 Fiscal Year Research-status Report
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25450308
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
篠村 知子 帝京大学, 理工学部, 教授 (80579235)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 強光 / 低温 / カロテノイド / ユーグレナ / バイオエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、申請時にこの年度以降に進めることを計画した「強光応答に関わる遺伝子の発現解析と機能解析」に沿った研究を実施した。以下に主要な結果を記述する。 ユーグレナを水温20度以下かつ光強度240 micro mol m-2 s-1以上で培養すると、細胞増殖が減少し、カロテノイドと推察される色素を細胞内に蓄積することがわかっていたが、ユーグレナにおけるカロテノイド合成経路は明らかになっていなかった。そこで、モデル植物等で既知のカロテノイド合成系酵素遺伝子の情報およびユーグレナのESTライブラリ情報を活用して逆遺伝学的手法を用い、カロテノイド合成経路の遺伝子の単離と機能解析を進めた。その結果、カロテノイド合成経路の初期段階に作用するゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)合成酵素遺伝子 (CrtE)やフィトエン合成酵素 (CrtB)、フィトエン不飽和化酵素 (CrtP)、ζ-カロテン不飽和化酵素 (CrtQ)のオルソログ遺伝子と推察されるESTを見出した。これらの遺伝子のcDNAを単離し、カロテノイド合成系を持たない大腸菌に導入して機能を解析した。好気性細菌Pantoea ananatisのCrtE遺伝子とともにユーグレナのCrtB (EgcrtB)を発現させた大腸菌はフィトエンを合成したことから、EgcrtBがフィトエン合成酵素遺伝子であることが、遺伝子配列上の類似性のみならず、機能解析からも示された。今後は、これらの遺伝子が強光や低温条件下でどのような発現制御を受けるのかを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、概ね申請時の計画に沿った実験に取り組んで前記の成果を得た。 ユーグレナという非モデル生物を扱いながらも、カロテノイド合成系酵素遺伝子群の発現解析や全長クローニングおよび機能解析を迅速に達成することができたのは、ゲノム情報が未公開のユーグレナを材料に効率よく遺伝子探索へとアプローチするための逆遺伝学的手法を、学内外の共同研究のもとで確立することができたからである。これにより、これまで分子機構があきらかになっていなかったユーグレナの強光応答におけるカロテノイドの生合成を通じた生理応答機構を、分子レベルで解明するための基本的なツールが整備できたと考えており、今後、強光や低温応答における分子機構解析への道筋が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、「強光応答に関わる遺伝子の発現解析と機能解析」について、次のような研究を推進する。まず、単離したカロテノイド合成系遺伝子群のうち、どの段階の遺伝子が強光応答と最も関連が深いかについて、遺伝子発現と光強度との関係を詳細に解析することで相関を調べる。発現レベルでの調節が行われない場合も考え、カロテノイド分子種の増減量についても同時に解析する。さらに、強光下においてカロテノイドが強光による傷害忌避応答の機能を有するかどうかを調べるため、単離したカロテノイド合成系遺伝子群のうちいくつかの遺伝子ノックアウト系統を作出し、その表現型を解析する計画である。
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Research Products
(3 results)