2015 Fiscal Year Research-status Report
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25450308
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
篠村 知子 帝京大学, 理工学部, 教授 (80579235)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微細藻類 / ユーグレナ / Eulgena / カロテノイド / 強光 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、ユーグレナにおけるカロテノイド合成経路の遺伝子群のオルソログ遺伝子と推察されるESTを見出したので、平成27年度は、これらのうち、特にゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素遺伝子(EgcrtE)とフィトエン合成酵素 (EgcrtB)遺伝子の機能解析に注力した。その結果、これらに遺伝子がユーグレナ細胞においてもそれぞれ予測された酵素活性をもつことを明らかにした。さらに、実験室での培養実験の結果、ユーグレナを25˚C・光強度920 µmol m-2 s-1連続照射下で7日間培養すると、細胞密度が対照区(25˚C・55 µmol m-2 s-1)に比べ最大で91%減少すること、EgcrtBの発現量が1.3倍に上昇し細胞内にカロテノイドを蓄積することが明らかになった。また、水温20˚Cでは、55-240 µmol m-2 s-1照射下で培養したユーグレナにおいて、対照区に比べ細胞密度が最大でそれぞれ88%と92%減少し、EgcrtB遺伝子の発現量は1.3倍と1.9倍に上昇した。ユーグレナは20˚C程度の水温で低温ストレスを受け、光ストレスを受けやすくなること、強光傷害回避のためにカロテノイドを利用していることが考えられた。これらの結果について原著論文として報告した。 さらに、強光や低温ストレスを受けた場合のユーグレナ細胞中の主要なカロテノイド分子種の組成がどのように変化するのかをHPLCで分析する実験に着手し、ユーグレナのカロテノイドとして報告されているネオキサンチン、ジアジノキサンチン、ジアトキサンチン等を分離検出できる条件を確立し、本格的な分析の準備を整えた。また、遺伝子の発現量を変化させて表現型を解析することを目指し、まずは発現量を減少させた場合の影響を観察するためのRNAiによるノックダウン株を作出するための一連の実験環境の整備と条件検討を行い、プロトコールを確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25~27年度には、ほぼ申請時の計画に沿った実験に取り組んで前記の成果を得た。ユーグレナは非モデル生物であるが、結果として短期間にカロテノイド合成系酵素遺伝子群の発現解析や全長クローニングおよび機能解析を迅速に達成することができた。これは、学内外の共同研究者との連携のもとでESTライブラリを活用してゲノム情報が未公開のユーグレナを材料に効率よく遺伝子探索への手順を進めることができたからであると考えている。さらに、HPLCによる詳細なカロテノイドの分子種分析や遺伝子の発現量を調節する実験系にも目処がついたことにより、これまで分子機構が明らかになっていなかったユーグレナの低温強光応答におけるカロテノイドの生合成を通じた生理応答機構を、分子レベルで明確に理解するための基本的なツールを整備しつつあると考えており、強光や低温応答における分子機構解明への道筋が一層明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
ユーグレナ細胞は、強光傷害回避のためにカロテノイドを利用していることが考えられたため、次年度以降は、強光応答に関わるカロテノイド分子種の組成変化をHPLCを用いて詳細に分析する。さらに、ESTライブラリにオルソログ遺伝子が存在することを確認できたカロテノイド合成系遺伝子群のうち、まだ遺伝子の単離が完了していないものについても単離し、それらの遺伝子の発現と強光応答との関係を詳細に解析することで、どの段階の遺伝子が強光応答と最も関連が深いかについての相関を調べる。遺伝子発現レベルでの調節が行われない場合も考え、先のHPLC解析の結果と合わせてカロテノイド分子種の増減量についても解析する。 さらに、昨年度着手したカロテノイド合成系遺伝子のノックアウト系統をRNAiにより作出してその表現型を解析する実験や、遺伝子の過剰発現株の作出とその表現型解析に注力し、強光下における傷害忌避応答としてのカロテノイド機能を明らかにすることを目指す。
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Remarks |
大学ホームページでの「植物分子細胞学研究室」が、篠村をPIとする研究室に該当する。
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Research Products
(9 results)