2014 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータによる原子力発電所事故の食料需要への影響分析
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25450323
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松田 敏信 鳥取大学, 農学部, 教授 (40301288)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子力発電所事故 / 生鮮魚介・肉類需要 / 需要システム / LA/QUAIDS / CUUS / シフト変数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,原発事故による放射能汚染が家計生鮮魚介・肉類需要に与えた影響を計量分析により明らかした. 原発事故による放射能汚染が報道された生鮮魚介,生鮮牛肉,および生鮮豚肉に,それらの連関財と考えられる生鮮鶏肉を加えた4品目を分析対象とした.また,分析モデルとして,シフト変数を取り入れてもCUUSを満たす独自モデルのLA/QUAIDSを用いた.CUUSは,データのスケーリングによって被説明変数の予測値や弾力性の推定値が変わらない性質を意味する.需要システムによる実証分析では,たいてい人口統計学的変数や季節ダミー変数などのシフト変数をモデルに取り入れるが,有名なAIDSやQUAIDSはシフト変数を取り入れるとCUUSを満たさなくなる.その結果CUUSが損なわれ,データをどのようにスケーリングするかによって弾力性の推定値が変わってしまうという不都合が生じる. シフト変数と構造変化仮説を組み込んだLA/QUAIDSによる分析の結果,原発事故による放射能汚染は,生鮮魚介から生鮮豚肉へシフトさせるような影響を家計需要に与えたことが示された.詳細をみると,生鮮牛肉はより支出非弾力的に,生鮮魚介と生鮮豚肉はより支出弾力的になった.また,生鮮魚介需要の減少トレンドは消失し,生鮮豚肉需要の増加トレンドは減少トレンドに転換した.さらに,放射能汚染に関する報道後,原発からの距離は,生鮮魚介需要を減少させ,生鮮鶏肉需要を増加させるような効果をもつことが示された.一方,非補償・補償価格弾力性および代替弾力性には,統計的に有意な影響は認められなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原発事故による放射能汚染が家計生鮮魚介・肉類需要に与えた影響を,独自の需要システムであるLA/QUAIDSにより明らかにし,一定の成果を挙げることができたので.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,新たなデータソースを含め,実証分析に用いるデータを拡充する方向で研究を進める.
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