2014 Fiscal Year Research-status Report
地域性に応じた多面的な食育推進及び生産者と消費者の連携強化に関する社会科学的研究
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25450331
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
上岡 美保 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (90339094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 裕人 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (00339095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地産地消 / 離島 / 訪問者 / マルシェ / 都市部 / 生産者 / 消費者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域性に応じた多面的な食育推進と生産者と消費者の連携をいかに強固なものにするかを課題としている。平成26年度は、主として3つの調査を実施した。 まず、一つ目は、前年度、離島である佐渡市の住民を対象とした調査に引き続き、佐渡市の訪問者を対象とした「地産地消に関する調査」を実施した。その理由は、島外から来る訪問者が訪問先の農林水産物に対して、どのような意識を持っているかを明らかにするためである。それは島内外の消費者ニーズを把握し、地域の農林水産物の需要を伸ばすことが可能となるためである。調査の結果、訪問者は、佐渡市の農林水産物には大いに魅力を感じている一方で、その情報が十分ではないことが明らかになっている。さらに、観光客の特性によって、地産地消に求める内容は異なるものであり、これらの特性に応じた情報発信と仕掛けが必要である。 二つ目は、東京都内で開催されているマルシェを対象に2つの調査を実施した。調査①は、出店者(生産者)がどのような意識、目的で出店するかについての調査を実施した。調査②として、マルシェを利用する消費者を対象に、何を求めてマルシェを利用するかについて調査を実施した。調査結果から、出店者は出店することによって、利益以外に得られるものが大きいと多くが回答した。その理由は、消費者の反応やニーズを直接把握したい、自分の商品を直接PRしたい、安全・安心をPRしたい等、一般流通では、把握し得ないあるいは、伝えられない情報を伝えたい意向が強かった。また、消費者については、新鮮な農産物を購入したい、国産食材・食品を購入したい、生産者から直接購入できるので安全・安心だ、日本の農林漁業者を応援したい等の意見が多く見られ、都心で開催されるマルシェの存在意義は、地域と都市をつなぐ上で、あるいは、日本農業の維持・発展において、重要であることが調査の結果から明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時における平成26年度の研究実施計画は、(1)平成25年度に実施した調査結果を取りまとめるとともに、分析を実施する。また、調査協力地へ結果を報告する。(2)食育への協力体制・地産地消を加味した農林漁業者のためのアンケート[調査B]の設計。(3)食品産業関係者等へのアンケート[調査C]の設計。であった。 以上の研究実施計画に則れば、平成26年度の調査・研究については、まず、平成25年度に佐渡市で実施した住民調査について、現地へ成果報告済みである。またさらに分析を進め、結果の公表として平成27年5月の日本フードシステム学会での報告、論文投稿を予定している。 また、地産地消を加味した農林漁業者の調査Bについては、東京都内で開催されているマルシェに出店している農業生産者を対象に調査を実施することができた。本研究の課題である地域性に応じた食育の推進という点では、都市部で開催されているマルシェを対象とすることによって、前年度の離島地域とはまた別の地域性の下で、調査を実施することができた。また、生産者と消費者の連携強化の点では、都市部のマルシェを介することで、生産者と消費者がいかに連携を強めていけるかの方策について、調査、検討することができたといえる。 調査Cについては、食品産業関係者への調査を予定していたが、平成26年度については、食品産業関係者のみを対象とした調査の実施には至らなかった。ただし、マルシェの出店者には、農業生産者のみならず、流通業者も含まれており、その意味では、食品産業関係者の一部の調査は実施できたといえる。また、補足的調査として、学校給食への食材供給において、地産地消に力を入れている岩手県内の直売所関係者へのヒアリング調査を実施しており、学校給食における生産者と需要者の連携強化における食品産業の役割については、次年度の調査への足がかりはできたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成26年度に実施した調査結果について、関係機関に対して、第一段階としての調査結果のとりまとめは報告済みであるが、さらに分析を進めると共に、成果の公表に努めたい。 (2)平成27年度の研究実施計画については、学校給食関係者へのアンケート調査[調査D]の設計を予定している。本計画については、新たに特徴ある地域を選定し、調査を実施することを検討している。既に、平成27年度4月末に沖縄県学校給食会に訪問し、関係機関と意見交換をする予定となっている。その際、栄養士や教員等への調査についても実施可能性についても関係機関と具体的に相談する予定である。 (3)[調査D]の実施後、詳細に分析し、学校給食における地産地消推進の課題と解決の方策について提言していく予定である。また、成果の公表も積極的に行っていきたい。 (4)平成27年度は、本研究の最終年度となることから、平成25年度より実施してきた5つの調査と平成27年度に実施予定の調査結果を踏まえ、地域性に応じた食育の推進と、あらゆる視点における消費者と生産者の連携強化の可能性について、提言していく。 (5)以上の調査以外にも、別の調査の必要性に応じて、適宜実施していく予定。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、平成26年度に使用予定であったアンケート調査に伴う人件費を必要としなかったことに加え、ヒアリング調査時においても専門知識の提供に対する謝金が予定額よりも必要でなかった為である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度についても調査をいくつか予定しており、その際、前年度に必要としなかった人件費についても使用予定である。また、調査によっては、関係機関と相談の上、調査方法が郵送調査法となる場合も予想され、その場合は、郵送料としての使用可能性もある。いずれにしても、関係機関と相談の上、調査方法を決定し、臨機応変にかつ適正に使用する。
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Research Products
(3 results)