2014 Fiscal Year Research-status Report
日本の水産技術協力プロジェクトの形成・実施過程の特徴と地域漁業
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25450345
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山尾 政博 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (70201829)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 技術協力 / 水産分野 / 内水面養殖 / 農民間普及 / 中核農家 / 広域沿岸資源管理 / クラスター・アプローチ / 生産管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジア開発途上国では、沿岸域生態系の保全と水産資源の持続的利用をはかり、農漁村社会の貧困解消に向けて、様々なアプローチにもとづく水産業振興をはかっている。本研究では、時代とともに移り変わってきたアジア開発途上国の水産業において、日本がどのような要請を受けて技術協力を計画・実施し、その発展にいかに貢献してきたかを分析することを目的にしている。 平成26年度は、国際協力機構(JICA)がこれまで実施してきた技術移転プロジェクトのうち、1)農村における内水面淡水養殖普及、2)沿岸域資源管理のクラスター・アプローチ、の二つを主に取り上げて検討した。1)については、本研究費では、ラオスの南部山岳丘陵地域生計向上プロジェクト(LIP)を調査した。関連して、カンボジアの淡水養殖改善普及プロジェクト(FAIEX2)、マダガスカルの北西部マジュンガ地区ティラピア養殖普及プロジェクト(PATIMA)についても調査する機会を得た。三つとも、JICAが発展させた「農民間普及(farmer-to-farmer)」手法にもとづく、持続的な種苗生産を行う中核農家の育成と一般農家への養殖普及をめざしたものである。普及行政が十分に機能しない場合でも、養殖技術を習得した中核農家が種苗の販売を通じて、農家への技術普及をはかれる点が確認された。カンボジアのプロジェクトは成功事例と位置付けることができる。 2)については、フィリピンのイロイロ州のバナテ湾・バロタックビエホ湾の広域沿岸資源管理組織(BBBRMCI)を対象としたプロジェクトを取り上げた。持続的な資源利用と効果的な漁業管理を実施するために4町の共同組織が設立され、この活動を強化するために技術協力が実施された。どのような成果をあげたかを検討した。 水産加工業及び養殖業における安全管理や生産管理については、タイを事例にその効果を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度、フィリピンの沿岸資源管理組織の調査が、対象地域の台風被害で予定通りに計画できなかったために、作業がやや遅れた。その後、復旧作業が進んだこともあり、調査を再開できた。この間に、内水面養殖に関する技術協力プロジェクトに関する調査を実施した。特に、マダガスカル、カンボジアの2か国で類似のプロジェクトを視察する機会に恵まれ、そこで得た知見をもとに大きく研究を前進させることができた。 水産加工業等に焦点をあてた食の安全は、養殖GAPと加工場のHACCP等の認証取得に関する調査を実施できた。その成果を踏まえて、東アジアの食品産業に関する分業体系に位置付けて、わが国の技術協力の成果を議論できるまでになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は、第1に、最近の日本の水産分野の技術協力で最も大きな成果をあげている内水面養殖普及、特に、農村における種苗生産技術の定着と中核農家の育成、彼らを通じた養殖の一般農家への普及について、分析結果を踏まえて成果をまとめる。 第2に、地方分権型・住民参加型の資源管理プロジェクトについては、プロジェクト活動が成果を残しながらも、受け皿となった組織が持続性に欠ける傾向がある。漁獲漁業分野の技術協力は、養殖業と比べて不安定さがつきまとう。地方政治や資源管理を担当する自治体行政にいかに持続性をもたせるかが検討課題になっている。フィリピンを事例に調査を続ける。第3に、水産加工業・インフラ管理に関しては、タイの養殖生産工程管理(Good Aquaculture Practice)とHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)を事例に、輸出志向型水産業のなかで食の安全がどのように確保されようとしているのかを分析する。 第4に、政策形成に関する技術協力、あるいは支援プロジェクトがどのような成果をもたらしているかを明らかにする。個別の国に対する協力とともに、東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC、地域国際機関)にみられるリージョナルな技術協力の成果にも焦点をあてる。 以上を踏まえて、本研究のまとめを行う計画である。
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Causes of Carryover |
本来調査予定対象としていたプロジェクトに対して、国際協力機構(JICA)等から派遣される機会を得たことから、あえて支出する必要がなくなった。また、フィリピンでの調査については、台風被災にともなう復興作業のために、十分な調査ができなくなってしまった。実施はしたが、期間を短縮して対応したことから、次年度に再度計画をすることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィリピンでの調査を継続実施するとともに、カンボジア、タイにおける技術協力プロジェクトを対象にした調査に支出する予定である。
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Research Products
(19 results)