2013 Fiscal Year Research-status Report
遊泳魚と底生魚の共存に対応した粗石・魚巣配置の最適化手法
Project/Area Number |
25450353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
前田 滋哉 茨城大学, 農学部, 准教授 (00346074)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生態水理学 / 最適化 |
Research Abstract |
土地改良法で「環境との調和への配慮」が原則化されて以来,農業農村整備事業では多様な環境修復技術が導入されてきた.魚類の生息地保全に関するものでは,魚道,魚巣,置き石等の環境配慮工法が実施され,一定の成果を上げてきた.しかしこれらには,近年進展している生態水理学的知見が十分には活かされておらず,改善の余地が大きい. 本研究の目的は,農業用排水路における魚類生息環境の最適化手法を開発することである.具体的には,水路への粗石や魚巣の配置を,事業後の水路・生態環境の予測に基づき決定するため,水理解析と最適化理論を融合した手法を提案する.これにより,十分な学術的裏付けのある環境配慮事業の設計が可能になり,有効な事業の再現性向上が期待できる. 平成25年度は茨城県美浦村興津地区において,霞ヶ浦流入河川の一つである高橋川に接続する農業用排水路を研究対象に設定した.特に,矩形断面水路の魚巣が敷設されている区間と無設置区間で定期的な流速,水深,水温,溶存酸素量の計測を行った.また,魚巣に水中カメラを設置し,コイによる魚巣の利用状況を撮影した.ウキゴリ,タモロコの水路での存在を確認した.また,魚巣内外,魚巣無区間の乱流特性を把握するため,3次元瞬間流速の連続観測を多くの測点で実施した.並行して,仮想水路内での魚類生息地の価値の最大化を図る手法について,これまでの研究成果を国際学会と論文に発表した.また,水路における3次元流況の数値計算手法について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚巣の設置された農業用水路について,過去の生態観測資料や図面を入手できたことから,現地の水理観測,魚の採捕を実行できた.3次元電磁流速計を購入し,魚巣内外の流況を観測・分析できた.これらより,環境配慮工の最適化を数式で表す作業は予定通りに進んではいないものの,3次元流れの数値計算を行うためのデータ蓄積等の準備が順調であることから,達成度を上記のように評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
現地水路における流量・水位データに基づき,3次元流れモデルの妥当性の検証を本格的に実施する.環境配慮工の最適化モデルの定式化を完成させ,必要なプログラミングを行う.また,水路の水理環境の不確実変動を考慮した上で魚巣の最適配置を導くよう,確率論的最適化モデルへ発展させる.最適化問題を解いて得られた知見を現場と比較し,環境配慮工法の改善法について考察し,得られた知見を整理する. 研究成果は国内外の学会で口頭発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度当初は測量器具であるスマートセオを購入する予定だったが,詳細な現地調査の結果,魚の採捕に不可欠な消耗品等が増加したことから,高額のスマートセオは購入しなかった.その代わりにスマートセオを用いない調査方法を考案し,実施した.また,排水路の流量が大幅に減少する冬季は調査に向かなかったため,結果的に未使用額が生じた. 未使用額は,次年度に実施する魚の採捕に関するアミ類,文献などの消耗品に使用する.また調査の進み具合に応じて,成果発表旅費に使用する予定である.
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Research Products
(3 results)