2013 Fiscal Year Research-status Report
高温物理消毒が地表面土壌の構造および物質移動特性に与える影響
Project/Area Number |
25450355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
斎藤 広隆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70447514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向後 雄二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30414452)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土壌消毒 / 熱水 / 団粒構造 |
Research Abstract |
連作障害の防除のために広く用いられてきた臭化メチルの代替技術として,熱水土壌消毒が注目されている。熱水土壌消毒は,非常に簡便な操作で様々な病原菌に対し高い防除効果があるだけでなく,土壌の物理性が改善することなどが経験的にわかっている。しかし既存の研究は,消毒効果に関するものがほとんどである。そこで本研究では,熱水処理前後の土壌の物理性を比較することで,土壌の物理性の変化を定量的に把握することを目的とした。 内径8 cm,高さ 10 cmのアクリル製カラムに,乾燥密度0.65 g/cm3になるように黒ボク土を充填した。その土壌表面に,20 ℃および95 ℃の水を10cm,20cm,30cm散水した。散水後,100cm3サンプラーにて不攪乱試料を採取し,飽和透水係数および乾燥密度を求めた。また,攪乱試料も採取し,耐水性団粒を求めた。熱水処理中の地温の変化を熱電対により測定し,排水の濁度を測定した。対照実験として,豊浦砂を用いて同様の実験を行った。 黒ボク土では,熱水の散布により45℃以上を,10cmおよび20cm,30cmでは90分および160分,190分ほど保った。また,排水中の濁度は20℃よりも95℃の場合がすべて高い値をとった。このことから,熱水処理により土壌から何らかの物質が洗脱されることが推察された。熱水の散布により,土壌の乾燥密度は増加し飽和透水係数は小さくなったが,散水深度との関連は見られなかった。一方で,透水係数と耐水性団粒には正の相関が得られた。耐水性団粒は,20℃では散水深度の大小と平均重量直径の減少の度合いに関連が見られなかったが,95 ℃では散水深度が増加するにつれて平均重量直径は減少した。 土壌の団粒構造が透水係数に影響を及ぼすことがわかった。また,使用する熱水の量が増加することで団粒構造の耐水性は低下しやすいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の一つである土壌構造破壊要素試験については,予定通り実施し団粒構造破壊のメカニズムの解明につながる研究成果を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,カラム実験および土層を用いた実験を行う。カラム実験は,熱水の施用が土壌の物理性および化学性に与える影響を定量的に把握するために行う。そのため,団粒構造の発達した土壌をカラムに充填し,温度や散水強度を変化させた熱水を散布し,散布前後の土壌を用いて透水性や保水性,団粒構造の変化を求める。また,硝酸態窒素なども調べることで化学性の変化についても把握する。加えて,トレーサーなどを用いて熱水による溶質の移動特性を明らかにする。また,排水中に含まれる土粒子や有機物を濁度計などを用いて定量化する。加えて,カラム実験から得られたデータを用いて,土壌の物理性及び化学性を温度の関数であるとし適切な関数形を適用し,物理性および化学性の変化のモデルを構築する。 次に,土槽実験を行う。土槽を用いた実験では,土中の温度の変化や水分量の変化をモニタリングするために行う。このとき,あらかじめ決められた深さに,熱電対や土壌水分件を設置する。加えて赤外線サーモカメラによる土中温度の計測を行うことで,二次元的な土中温度の変化もモニタリングする。得られた熱水の移動データを用いて,土中水分・熱・溶質移動プログラムHYDRUSを用いた解析により定量化および最適な関数形の適用を行い,熱水移動のモデルを構築に用いる。 最後に,圃場実験を行う。均一に土壌が充填されたカラムや土槽と異なる不均一な圃場では,カラムや土槽を用いた実験では起こりえない選択流などが起こり得る。そこで実際に,不均一である圃場においての熱水の移動をモニタリングすることで,均一である土槽実験とは異なる熱水の移動特性が得られる。土槽実験と同様に実験前には,地中に熱電対や土壌水分計を深さ70 cm程度まで設置し,熱水の移動をモニタリングする。また,実験前後の攪乱土壌および不攪乱土壌採取し,透水性などの物理性および硝酸態窒素などの化学性の変化について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
土槽実験を次年度に実施することとしたため. 土槽実験を中心に支出予定.
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