2013 Fiscal Year Research-status Report
地域温暖化傾向が農業用水資源としての湖水質変化に及ぼす影響解析
Project/Area Number |
25450364
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
籾井 和朗 鹿児島大学, 農学部, 教授 (40136536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 祐二 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60526911)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 農業用水資源 / 温暖化 / 水温 / 湖水 / 数値計算 / 水質 / 全循環 / 溶存酸素 |
Research Abstract |
本研究では,鹿児島県南薩地域の貴重な農業用水資源である池田湖に及ぼす地域温暖化傾向の影響を,水質の観点から検討することを目的とし,本年度は以下の①~③の研究を実施した。 ①現地観測:水温・溶存酸素計を水深10~200mの12ヶ所の水深に設置し,1時間間隔で2013年11月27日~2014年4月10日に観測した。このデータは池田湖の鉛直混合機構解明の基礎資料となる。 ②全循環発生要因:池田湖では,1986年以降25年間,全循環は確認されていなかったが,2011年と2012年の2月に水深200mの溶存酸素が上昇,全循環が発生したと判断できる。1978~2012年の数値計算により求めたシュミット安定度は,2011年2月が最低値,2012年2月が2番目に小さい値となった。湖水の安定度が小さくなった要因として,この2年間の冬季の気温の低下(平均気温9℃以下)と風速の増大(日平均風速2m/s以上)が挙げられる。 ③植物プランクトンに及ぼす影響と数値解析:植物プランクトンの季節変化に関し,夏季に緑藻鋼,秋季から冬季に珪藻鋼が増加する傾向が認められたが,優占種は各年で異なり,規則性は認められなかった。また夏季から秋季の植物プランクトンは,表層よりも水深20~30mに多く分布していることがわかった。これは,表層よりも水深30mの栄養塩濃度が高いこと,及び夏~秋季の透明度は平均9 mであり,有光層の水深が0~30mであることが要因である。1970年代の透明度は平均5.5 m(推定有光層17m)であり,近年の透明度は平均8.5m(推定有光層26m)であることから,透明度の増大によって植物プランクトンが増殖できる水深がより深くなっている。数値計算によれば,透明度の増加に伴い,水中における短波放射の到達深度が深くなり,表層と深層の間に位置する変温層の中心位置が,9月には約2m深くなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の主要な検討課題となる溶存酸素の数値解析の準備がやや遅れているが,当初計画した検討項目は,おおむね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
現地観測を継続し,独自の湖水質データ,特に水温と溶存酸素の時間・空間変化のデータを蓄積し,研究を推進する。 今後の課題として,本研究で構築した乱流拡散型鉛直1次元数理モデルでは,水温の再現は妥当であるが,溶存酸素,特に全循環時の溶存酸素の動態の再現が困難な場合が想定される。そこで,数理モデルについて,風に起因する湖水中の連行現象を考慮したアルゴリズムを新たに適用し,再検討を行う。なお,数理モデルによる溶存酸素動態の再現が計画通り進まない場合の対応策として,汎用的な流れ場-生態系結合モデルの利用も検討する。
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Research Products
(3 results)