2014 Fiscal Year Research-status Report
作物体温と氷核形成温度の相対関係に基づいたGPS援用型広域霜害予測システムの開発
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25450372
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森 牧人 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60325496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 安代 高知大学, 自然科学系, 准教授 (20435134)
安武 大輔 高知大学, 自然科学系, 准教授 (90516113)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | GPS / 氷核形成温度 / 霜害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度に実地検証された,霜害発生の仮説に基づき,その定量化および前年度予察的に評価された霜害危険度インデックスFIFRI(Frost-Injury/Frost-Risk Index)の更新・作成が行われた.まず、茶葉の表面温度の予測モデルが構築され,過去の観測事例(データ)を用いて,短時間ステップで同温度の予測シミュレーションを行った.その結果,茶葉の温度の計算値は,茶葉の黒体等価温度より導かれる実測値と比較的よく一致し,モデルパラメータの同定に改善の余地が残るものの,同モデルの妥当性が概ね確認された.次に,上述のFIFRIについては,既存の茶樹上の気温データの履歴を用いることにより定式化を行い作成した.それを,西日本が大規模な霜害に見舞われた事例に適用することにより,FIFRIの季節変化について調べた.同指標は明瞭な季節変化を見せ、2月下旬から中旬にかけてインデックス値が減少することにより危険度が低下するものの,3月下旬には同値が再び急激に上昇し危険度が増し,大規模な霜害に見舞われた当日にピーク値をとる結果が得られた. 前年度に引き続き取得されたGPS-気象観測網のGPSおよび気象データが併用されてデータ解析が行われた.すなわち,入手できる最新の2013年のデータを用い,広域霜害予測システムPSRFID(Prediction System for Regional Frost Injury Distribution)のブラッシュアップが行われ,その性能が評価された.具体的には,地上気温を熱源とし,天空の等価黒体温度を環境温度としたニュートン冷却型の最低気温予報モデルが構築され,PSRFIDに組み込まれた.同予報モデルは,四国地域内の低平地の放射冷却による温度低下を比較的よく再現することが示されたが,中山間地では再現性がよくない場合も認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は(1)前年度に実地検証された,霜害発生の仮説に基づき,その定量化および霜害危険度インデックスFIFRIの更新・最終作成を行い,(2)引き続き取得されるGPS-気象観測網の環境データと併せてデータの解析を行うとともに,(3)それより得られる知見を開発中のシステムの性能評価・ブラッシュアップに使用するように計画された. (1)に関しては,霜害発生の仮説に基づき,その定量化および霜害危険度インデックスFIFRI(Frost-Injury/Frost-Risk Index)が作成され,茶葉の表面温度の予測モデルも構築されるとともに,過去の観測事例(データ)を用いて、短時間ステップで同温度の予測シミュレーションの段階まで実施した.(2)については,最新のGPS測位データおよびアメダス気象観測網からの気象データを用いて具体的に解析が行われ,いくらかの重要な知見が得られた.(3)については,それらの知見を用いて,広域霜害予測システムPSRFID(Prediction System for Regional Frost Injury Distribution)のブラッシュアップに用いられ,その性能が評価された.(2)に関しては夏季と冬季の天候不良により,必ずしも質の高いデータが得られなかった点,一方,(3)についてはモデルパラメータの同定が十分でなく,夜間冷却に伴うモデルによる温度低下の再現性に地域差が見られた点が,研究に若干遅れを生じている理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現地観測において,可能な限り質の高いデータが得られるように観測計画を十分に練るとともに,広域霜害予測システムPSRFID(Prediction System for Regional Frost Injury Distribution)に使用されるモデルパラメータの同定法についてさらに研究を進め,夜間冷却に伴うモデルによる温度低下の再現性を高める予定である.さらに,以上の点を十分に踏まえ,平成27年度は前2ヶ年間に得られた結果に基づき,開発を行ってきた広域霜害予測システムPSRFIDを完成させ,最終的には,霜害危険度インデックスFIFRI を用いることにより,四国地域に対して上述の高い空間解像度で霜害の広域予測を行うとともに,予測技術の確立を図る.
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Causes of Carryover |
研究第2年度(2014年度)は,(1)夏季の天候不順により研究対象作物の生育が必ずしも十分でなかったこと,(2)冬季は一時的な低温に見舞われたが、総じて暖冬傾向を示したこと,および(3)本研究の対象でもあり、2010年のように西日本で大規模霜害が発生したような条件が見込めなかったために,夏季および冬季の現地観測の回数が減り、それに伴う経費(観測経費や成果発表のための旅費)が減少したこと,以上が理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究第3年度(2015年度)は,期間を通じて現地における屋外観測の回数を増やすとともに,それに伴い室内実験の頻度を増し,成果についても発表回数を増やすように計画している.
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