2013 Fiscal Year Research-status Report
受精能力制御因子で派生する欠陥分子をマーカーとする家畜精子の分子性状検査法の開発
Project/Area Number |
25450394
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
原山 洋 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30281140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村瀬 哲磨 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30303514)
福島 護之 兵庫県立農林水産技術総合センター, その他部局等, 研究員 (60463395)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 応用動物 / 畜産学 / 雄性繁殖能力 / 精子 / 人工授精 |
Research Abstract |
実験1. ウシ(7頭)およびブタ(3頭)から新鮮射出精子を採取した。一般性状検査により活力,形態および先体の正常性を確認できた試料(ウシ65検体,ブタ22検体)を実験2に供試した。またウシ(15頭)から精巣および精巣上体を採取して,mRNA発現解析用の試料として精巣を凍結保存した。精巣上体から精子を回収し,一般性状の正常性を確認した後に実験2の試料とした。さらに精巣上体精子を検査した個体のうち,8頭については人工授精での受胎成績(のべ571回分)を得た。 実験2. 受精能力制御分子の性状解析により,IZUMO [ウシ,IZUMO1(43 kDa型と17 kDa断片型),先体主部],SPACA1 [ウシおよびブタ,チロシンリン酸化型(42 kDa型)および非リン酸化型(34~38 kDa),先体の主部および赤道節],カルシウム依存性プロテアーゼ(ブタ,CAPN2,中片部および鞭毛主部),セリンスレオニンタンパク質ホスファターゼ(ウシおよびブタ,PP1gamma2,後先体部,頸部および鞭毛主部)のアイソフォームおよび分布部位を特定した。またIZUMO1およびSPACA1は先体反応とともに精子頭部での分布を変化させること,およびSPACA1についてはその際に一部が断片化してバリアントを派生することを示唆した。しかし,EPAC(ウシおよびブタ,EPAC1,先体主部)についてはC末端領域を欠損する断片として検出され,精子で全長型を見出せなかった。また後先体部セリンスレオニンリン酸化タンパク質(PA-pS/pT)についてはイオンポンプに焦点を絞り解析を進めているが,未だ分子の同定に至っていない。なお,アデニル酸シクラーゼ(ウシ,ADCY10)については第10エキソンの5’末端付近でのスプライシングエラーにより派生する欠陥分子を認識するポリクローナル抗体の作製を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
兵庫県立農林水産技術総合センター・北部農業技術センターとの連携により,当初の予定よりも多数のウシの研究試料(新鮮射出精子,精巣上体尾精子および精巣組織)および人工授精での受胎成績を得ることができたこと,およびブタでは夏季における研究試料(新鮮射出精子)を採取できたことから,実験1の目標を十分に達成できたと思われる。また,受精能力制御分子については,解析を行った6種類の分子のうち,4種類でアイソフォームおよび分布部位を特定できた。またIZUMO1およびSPACA1には分子性状の不均一性が存在することを明らかにするとともに,先体反応後に分布および分子マスの変化が生じることを示した。すでに欠陥分子の性状を明らかにしているADCY10を含めて3種類の受精能力制御分子を,次年度以降に実施予定の精子分子性状検査におけるマーカー分子として絞り込めたことから,実験2についても目標をおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通りに実験2を継続して精子分子性状検査におけるマーカー分子として利用可能な受精能力制御分子の更なる特定を試みる。またIZUMO1,SPACA1およびADCY10については,個体別および試料採取の季節別に分子性状を調査する(実験3)。さらにRNAレベルでの受精能力制御因子の欠陥分子の検出にも着手する(実験4)。なお,研究試料の採取および性状検査は主にウシにおいて継続し,検査例数を増加させる(実験1)。 実験3.IZUMO1,SPACA1およびADCY10の分子性状検査にあたっては,精子を固定後に間接蛍光抗体法に供し,各分子の分布に従って精子を分類する。また間接蛍光抗体法において大きな変化が見られた試料についてはSDS-PAGE・ウェスタンブロット法での解析に供する。 実験4.精子または精巣から回収するRNAを用いてRT-PCR法により受精能力制御因子のcDNA断片を増幅する。得られたPCR産物を電気泳動で分離した後,バンドを検出して増幅領域でのバリアントの有無を明らかにする。分離されたバリアントが認められた場合には各バンドをゲルから切り出し,塩基配列解析に使用する。
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