2014 Fiscal Year Research-status Report
ウシをモデルとした、加齢リスクを有する卵子を若返えらせる手法に関する研究
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25450400
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
岩田 尚孝 東京農業大学, 農学部, 教授 (50385499)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 加齢 / 卵子 / SIRT1 / 発生 / 初期胞状卵胞卵子 / オートファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は卵子内部にミトコンドリアの品質を改善する機構が存在するのかどうかについて検討した。ブタの胞状卵胞から採取した卵子をミトコンドリアの脱分極剤CCCPで処理することによって卵子中のミトコンドリアの機能を奪い、これをATPの減少、活性酸素量の増加で確認した。その後卵子ではミトコンドリアの合成を反映するTFAMの発現亢進が起こることを、またミトコンドリアDNAコピー数の増加が起こることを確認した。また卵子中では、オートファージの指標であるLC3のドットがCCCP処理で増えることが観察され、ミトコンドリアに障害を与えるとこれを作り変えて回復する機構が卵子に存在することを証明できた。さらに加齢ウシから採取したウシの初期胞状卵胞を対象に昨年度、胞状卵胞卵子でミトコンドリア更新効果が認められたレスベラトロールを添加し、その効果を検討した。レスベラトロールは卵子や顆粒層細胞のSIRT1の活性化することがWTで確認でき、両細胞のオートファジーの活性化をLC3のドット数増加とWTで確認できた。さらに体外発育卵子のミトコンドリア数は未添加に比べて有意に増加することが明らかにできた。レスベラトロール添加で得られた体外発育卵子の受精・発育能力も有意に改善していたため、レスベラトロール処理は、加齢個体から回収した未発育な卵胞卵子の能力も回復させる効果があると結論付けられた。同様の実験をブタの初期胞状卵胞に頼しても行い同様の効果があることを確認したが、加えて卵子内のエネルギー代謝が亢進するため脂質含量が変わることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり卵子中でのミトコンドリアの品質管理機構の存在を証明し、さらにこれを活用することで加齢個体から得られた卵子の能力を胞状卵胞でも、初期胞状卵胞でも証明することが出来た。さらにこれらの内容を4つの学術誌に掲載できている。また卵子の代謝にかかわる新たな知見も得ることが出来た。次年度予定していたマトリックスや細胞の交換を行う前実験や条件設定もほぼ完了しており、予定以上に成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、加齢と若齢個体から得られた顆粒層細胞を、加齢個体から採取した卵子顆粒層細胞複合体の体外培養系に外挿し発育能力を得る実験を行う。前実験では細胞の追加それ自体が卵子の発育を促す効果があることが若齢個体の卵子で確認できている。 また前年度、加齢個体から得た細胞のエネルギー代謝が低調である結果を受けて、培地の循環などを改善するため作製した培地透過性の高いマトリックスをブタ卵胞の体外培養に用いたところ卵子の発育支持能力が高いことが分かった。そこで当初の計画のマトリックスコートシャーレの代わりにこれを加齢個体から得られた初期胞状卵胞卵子の体外培養系に用いて発育支持の有無を確認する。
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