2014 Fiscal Year Research-status Report
網羅的RNAシークエンス解析を活用した卵黄抗体の輸送を担うIgY受容体の同定
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25450407
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村井 篤嗣 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10313975)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 畜産学 / 応用動物 / 卵 / ニワトリ / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
母ドリの体内では、IgY抗体が血液から卵黄へ移行し、胚やヒナへ免疫機能を付与する。このIgYの輸送は、卵胞内層に存在するIgY受容体により行われていると考えられているが、そのような機能を持つ受容体は同定されていない。本研究ではIgYを卵黄へ輸送する受容体候補遺伝子の探索を目的として、卵胞組織での網羅的発現解析により判明した遺伝子群の中から、有望な候補受容体遺伝子の選抜に取り組んだ。得られた結果の概要は以下の通りである。 1)全16,000の転写産物の中から、BLAST解析により、既知IgY受容体遺伝子であるCHIR-AB1に類似した配列を持つ転写産物の探索を試みた。2)CHIR-AB1、CHIR-B3を含む13の転写産物が抽出された。しかしながら、既知のCHIRファミリーの遺伝子発現レベルは全て低値であった。3)CHIR-AB1に類似したアミノ酸配列を有し、発現レベルが高値を示した未知転写産物を抽出した。4)この転写産物の遺伝子配列をデータベース上で確認し、ニワトリ卵胞mRNAを鋳型にした逆転写PCRによるクローニングを行った。4)推定上のアミノ酸配列部位にプライマーを設定した場合に、遺伝子断片は増幅できなかった。5)この未知転写産物は非翻訳領域が大量に転写されていることが判明し、タンパク質そのものは発現していないと判断された。以上の解析から、候補IgY受容体遺伝子を抽出するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・当初の予定通り、ニワトリ卵胞の最内層で発現する遺伝子の配列を次世代シークエンサーを用いて網羅的に判読することができた。 ・解読された遺伝子の中から既知IgY受容体の配列に類似する候補遺伝子を抽出したものの、この遺伝子は実際にはタンパク質としての発現が見られず、目的とするIgY受容体の遺伝子断片ではないと判断された。 ・昨年度中にIgY受容体の候補遺伝子を抽出する予定であったが達成することができなかった。 ・よって、当初の予定よりも研究の進展が遅れているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
・次世代シークエンサーでの解析によって得られた膨大なRNA配列の中から、目的とするIgY受容体の候補遺伝子を抽出することが極めて困難であることが判明した。 ・網羅的解析に供試したサンプルは通常ニワトリ単独のものであったことから、候補遺伝子を絞り込めない点が問題であった。 ・網羅的解析によりIgY受容体の候補遺伝子を探索する場合、IgYの卵黄輸送能に差がある複数の群を準備する必要があると考えられた。 ・特徴的なIgY卵嚢輸送能を持つトリ個体を見出すために、1)様々なウズラ系統でのIgYの卵黄輸送能を調査する。2)鳥類特有の免疫器官であるファブリキウス嚢を外科的に除去することでIgY欠損ニワトリを作出し、このニワトリのIgY卵黄輸送能を調査し、IgY輸送能の変動を調査する。 ・IgYの卵黄輸送能が特徴的なトリ個体が得られた場合、再度、この個体と通常ニワトリの2つのサンプルを網羅的解析に供試し、両者で発現レベルに差がある遺伝子群の中から候補遺伝子を抽出し、IgY受容体遺伝子の同定を目指す。
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