2014 Fiscal Year Research-status Report
資源循環型および自給飼料多給型肉用牛生産システムのLCA
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25450412
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
堤 道生 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター畜産草地・鳥獣害研究領域, 主任研究員 (70373248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寳示戸 雅之 北里大学, 獣医学部, 教授 (50355088)
金子 真 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター畜産草地研究領域, 研究員 (20582612)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ライフサイクルアセスメント / 環境影響評価 / 放牧 / 自給飼料 / 有機畜産 |
Outline of Annual Research Achievements |
八雲牧場、飼料自給率100%肥育、粗飼料多給肥育の肉用牛生産システムについて環境影響評価あるいはそれに向けた解析を行った。八雲牧場の肉用牛生産について、新たなデータを取得するとともに、全草地の栽培管理や牧場全体の肉用牛飼養頭数、出荷データおよび生産された牧草の成分分析値を整理した。飼料自給率100%肥育では、周年放牧肥育試験を実施し、放牧牛の体重や採食量、草地管理などの新たなデータを取得した。 八雲牧場における牧草生産に係る温室効果ガス(GHG)排出量およびエネルギー消費を1980年から2013年までの各年で解析した。収穫したTDN 1 tあたりのGHG排出量は、有機畜産導入(2005年)前後それぞれの平均で464および265 kg CO2eqであった。エネルギー消費は有機畜産導入前後の平均値でそれぞれ8123および2065 MJであった。このように、有機畜産の導入で採草生産に係るGHG排出量およびエネルギー消費が大幅に低減されることが明らかとなった。 粗飼料多給肥育システムについて環境影響評価を行い、次の結果を得た。粗飼料多給肥育システムにおける増体量あたりの環境影響は、慣行肥育システムと比較して、GHG排出量、酸性化ポテンシャル(AP)、富栄養化ポテンシャル(EP)、エネルギー消費およびLIME2(日本版被害算定型影響評価手法)のEco-indexでそれぞれ±0、-28、-24、-12および-27%であり、概ね低減されていた。 褐毛和種牛繁殖システムの環境影響評価を行い、飼料自給率100%肥育の環境影響評価結果と統合することにより、枝肉重量当たりの環境影響を評価した。その結果、飼料自給率100%肥育における枝肉重量当たりの環境影響は慣行肥育と比較して、GHG排出量、AP、EP、エネルギー消費およびEco-indexの順に14.9、40.3、27.3、36.0および45.8%下回ると評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、八雲牧場(北里八雲牛)、飼料自給率100%肥育、粗飼料多給肥育などのシステムを対象とするLCA手法を用いた環境影響評価を計画していた。 本年度は、日本草地学会および暖地畜産学会にて「有機採草生産における温室効果ガス排出量およびエネルギー消費」、「黒毛和種去勢牛粗飼料多給肥育の環境影響評価」および「褐毛和種牛繁殖システムのライフサイクルアセスメント」など4件の学会発表を行っており、これらの成果の学術誌への論文投稿を準備している。また、昨年度までの成果についても論文投稿を目前にしている。八雲牧場の肉用牛生産全体を対象とする環境影響評価についても成果がまとまりつつあり、近々発表の予定である。 また、九州沖縄農業研究センターでの飼料自給率100%肥育に関する試験についても順調にデータが積み上がっている。これに関連する投稿論文1報「周年放牧肥育技術により飼養された褐毛和種および黒毛和種去勢雄牛の増体量と血液性状の特徴」が掲載予定であり、さらに1報の論文「周年放牧肥育牛による放牧草の乾物、粗蛋白質ならびに可消化養分総量の摂取量および割合」を投稿している。 このように、研究計画で示した工程をほぼ計画通りに行っており、目的達成に向け研究が順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通りに、研究全体のとりまとめを行う。研究計画変更の予定はなく、研究を遂行する上での問題点は見当たらない。本年度に学会発表を行った「有機採草生産における温室効果ガス排出量およびエネルギー消費」および「黒毛和種去勢牛粗飼料多給肥育の環境影響評価」について、速やかに論文にまとめ、学術誌へ投稿する。また、昨年度学会発表を行った「褐毛和種去勢牛の周年放牧肥育のライフサイクルアセスメント」については本年度発表した成果「褐毛和種牛繁殖システムのライフサイクルアセスメント」とあわせて論文にまとめ、学術誌へ投稿する。本年度に行った周年放牧肥育試験の結果についても、データをとりまとめ、公表する。
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Causes of Carryover |
冬季に採取した試料の分析を委託先に依頼する予定であったが、一部の試料の調整が間に合わず、年度内に分析依頼を行えなかった。そのため、分析委託に係る費用の一部を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上で述べた採取済みの試料の分析委託費として使用する。
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Research Products
(4 results)