2013 Fiscal Year Research-status Report
新しく見出した牛ウイルス性下痢ウイルス関連疾患の病態解明と新規関連病態の探索
Project/Area Number |
25450420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
古林 与志安 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20301971)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 牛ウイルス性下痢・粘膜病 / 牛ウイルス性下痢症ウイルス / 持続感染 / 病理 / ウイルス遺伝子 / 中枢神経 |
Research Abstract |
牛ウイルス性下痢(Bovine Viral Diarrhea: BVD)・粘膜病は、BVD ウイルス(BVDV)感染に起因する消化器粘膜の潰瘍を伴う疾病であるが、免疫系が確立していない時期の胎子感染によって持続感染が成立し、様々な病態を引き起こすことが知られているものの、不明な点が多い。 本年度は申請者が新たに見出したBVDV持続感染関連病態の1つである、中枢神経白質異栄養症(硬化症:髄鞘低形成)について、1農場の6例で集団発生した症例を用いて詳細な病理像および病理発生機序解明研究を行った。症例は、4~12日齢のホルスタイン牛6例である。病理解剖では、これらの症例の中枢神経白質の硬度は増していた。病理組織検索では、全症例の中枢神経白質において、広範囲にわたるグリオーシスおよび髄鞘形成不全を特徴とする病変が認められた。臨床症状の程度と、中枢神経病変の分布および程度との間には、明確な関連性は認められなかった。また、全症例の血清から得られた原因ウイルスの5’非翻訳領域の塩基配列は同一であり、系統学的検索から既存のBVDVIb型株と98%の相同性が示された。BVDVIb型ウイルスは過去にも中枢神経白質異栄養症の一つである髄鞘形成不全の子牛から分離されていることから、中枢神経白質異栄養症の発生は、ウイルス株の遺伝子型に依存している可能性が指摘された。 ウイルス遺伝子をパラフィン材料上で証明する手掛かりとして、症例のパラフィン切片からRNAを抽出し、RT-PCRにてウイルス遺伝子が検出できることを確認した。また、保存血清を用いたBVDV関連新規病態の探索については、壊死性変化がみられる子牛の神経疾患症例を対象として検索を実施したが、BVDV持続感染が関与する病態は見出せなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体の目的は、病理診断症例の中から申請者がこれまでに見出している複数の病態、1)中枢神経白質異栄養症(硬化症)・糸球体様血管症の病態を明らかにすること、2)日常の病理検索の中で保存している血清を用いて、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索するとともに、3)通常の RT-PCR 法を用いた検討でBVDV の持続感染が確認できていないものの、血管壁のフィブリノイド変化や血管炎などのBVDV の特徴所見の1つが認められる疾患群、原因不明の神経疾患群などについて、一次感染の可能性を考慮し、ISH 法などを利用した病態解析を行い、未解明疾患に対する BVDV 感染関与の有無を検討し、明らかにすることにある。本年度の予定は、1)のうち、中枢神経白質異栄養症に関する研究と2)に関する研究を行うこととしていた。上述のとおり、本年度の研究では、まだ完全とは言えないものの、中枢神経白質異栄養症の病態を明らかにし、原因ウイルスを特定することができた。また、ウイルス遺伝子をパラフィン材料上で証明する手掛かりとして、症例のパラフィン切片からRNAを抽出し、RT-PCRにてウイルス遺伝子が検出できることを我々の検討系を用いて確認できた。また、保存血清を用いたBVDV関連新規病態の探索については、壊死性変化がみられる子牛の神経疾患症例を対象として実施し、これら病態にBVDVの持続感染が関与していないことを明らかにした。従って、全体として研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究全体の目的は、病理診断症例の中から申請者がこれまでに見出している複数の病態、1)中枢神経白質異栄養症(硬化症)・糸球体様血管症の病態を明らかにすること、2)日常の病理検索の中で保存している血清を用いて、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索するとともに、3)通常の RT-PCR 法を用いた検討でBVDV の持続感染が確認できていないものの、血管壁のフィブリノイド変化や血管炎などのBVDV の特徴所見の1つが認められる疾患群、原因不明の神経疾患群などについて、一次感染の可能性を考慮し、ISH 法などを利用した病態解析を行い、未解明疾患に対する BVDV 感染関与の有無を検討し、明らかにすることにある。H26年度の研究の目的・内容は、1)の中枢神経白質異栄養症の病態を更に詳細に解明するとともに、糸球体様血管症の病態を明らかにすること、2)の日常の病理検索の中で保存している血清を用いて、対象疾患を更に広げ、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索することにある。また、更に精度の高いBVDV検出法について検討し、H27年度以降の研究につなげることにある。H27年度は、2)の対象疾患を更に増やすとともに、H26年度の研究結果を受けて、3)に関する検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
発表を予定していた内容が、招待講演となったため旅費を自身で支出する必要がなくなったこと、当初予定していた校閲費等が当該年度では不要であったことから、次年度使用額が生じた。 H26年度は、多くの物品費(消耗品費)を必要とする研究を予定している。また、複数の論文発表を予定しており、校閲費・投稿料にかかる費用が増える予定である。従って、次年度使用額となった分については、これらのことを遂行するために、H26年度予算と合わせて有効に活用する。
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Research Products
(4 results)