2014 Fiscal Year Research-status Report
新しく見出した牛ウイルス性下痢ウイルス関連疾患の病態解明と新規関連病態の探索
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25450420
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
古林 与志安 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20301971)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 牛ウイルス性下痢・粘膜病 / 牛ウイルス性下痢症ウイルス / 持続感染 / 血管 / 血栓 / PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
牛ウイルス性下痢(Bovine Viral Diarrhea: BVD)・粘膜病は、BVD ウイルス(BVDV)感染に起因する消化器粘膜の潰瘍を伴う疾病であるが、免疫系が確立していない時期の胎子感染によって持続感染が成立し、様々な病態を引き起こすことが知られているものの、不明な点が多い。 本年度はBVDV持続感染関連病態の1つであることが疑われている、糸球体様血管症についての詳細な病理像および病理発生機序解明研究を行った。2例のBVDV持続感染症例で本変化が出現することを確認し、詳細な病理組織学的検索、免疫組織化学的検索および超微形態学的検索を行い、増殖細胞間に線維素および血小板が介在性に存在することを明らかにした。本結果より、本変の発生機序に血栓の形成が深く関与していることが疑われた。 ウイルス遺伝子をパラフィン材料上で証明する手掛かりとして、BVDV持続感染症例の中枢神経組織に対して、PCRラベリング法にて作製したプローブを用いたタイラマイド増感in situ Hybridization法を実施し、予備的な結果を得た。また、BVDV感染は視覚路に様々な異常を引き起こすことが知られていることから、申請者らが見出した黒毛和種牛の視覚路変性にBVDV持続感染が関与しているか否かについて検討し、本病態形成にBVDV感染が関与しないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究全体の目的は、病理診断症例の中から申請者がこれまでに見出している複数の病態、1)中枢神経白質異栄養症(硬化症)・糸球体様血管症の病態を明らかにすること、2)日常の病理検索の中で保存している血清を用いて、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索するとともに、3)通常の RT-PCR 法を用いた検討でBVDV の持続感染が確認できていないものの、血管壁のフィブリノイド変化や血管炎などのBVDV の特徴所見の1つが認められる疾患群、原因不明の神経疾患群などについて、一次感染の可能性を考慮し、ISH 法などを利用した病態解析を行い、未解明疾患に対する BVDV 感染関与の有無を検討し、明らかにすることにある。本年度の予定は、1)のうち、糸球体様血管症に関する研究と2)に関する研究を行うこととしていた。上述のとおり、本年度の研究では、まだ完全とは言えないものの、糸球体様血管症の病態を病理発生機序の一端を明らかにすることができた。また、ウイルス遺伝子をパラフィン材料上で証明する手掛かりとして、PCRラベリング法にて作製したプローブを用いたタイラマイド増感in situ Hybridization法を実施し、予備的な結果を得ることができた。また、保存血清を用いたBVDV関連新規病態の探索については、申請者らが見出した黒毛和種牛の視覚路変性にBVDV持続感染が関与しているか否かについて検討し、本疾患にBVDV感染は関与しないことを明らかにした。従って、研究は概ね順調に進んでいる。ただ、in situ Hybridization法の信頼性の確認作業に手間取っているため、総合評価としては少し遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究全体の目的は、病理診断症例の中から申請者がこれまでに見出している複数の病態、1)中枢神経白質異栄養症(硬化症)・糸球体様血管症の病態を明らかにすること、2)日常の病理検索の中で保存している血清を用いて、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索するとともに、3)通常の RT-PCR 法を用いた検討でBVDV の持続感染が確認できていないものの、血管壁のフィブリノイド変化や血管炎などのBVDV の特徴所見の1つが認められる疾患群、原因不明の神経疾患群などについて、一次感染の可能性を考慮し、ISH 法などを利用した病態解析を行い、未解明疾患に対する BVDV 感染関与の有無を検討し、明らかにすることにある。H27年度の研究の目的・内容は、2)について、対象疾患を更に広げ(壊死性変化を伴わない子牛の神経疾患や腎臓糸球体疾患など)、信頼性・特異性の高い方法にてBVDV(持続)感染の有無をスクリーニングし、新規病態を探索すること、および3)についての検討を行う。また、本項目の中には、1)で扱った疾患を含む持続感染に関連する病態も対象とし、それらの病態にBVDVがどのように関与しているのかについても検討を加える。
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Causes of Carryover |
当初予定していた消耗品費、投稿料・論文別刷代等を別予算で支出することができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度は研究の対象となる疾患が増えること、および消耗品費を多く必要とする検討が増える。また、複数の論文発表を予定しており、校閲費・投稿料等の費用が増える予定である。従って、次年度使用額となった分については、これらのことを遂行するために、H27年度予算と合わせて有効に活用する。
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[Journal Article] Optic pathway degeneration in Japanese black cattle.2015
Author(s)
Chiba, S., Funato, S., Horiuchi, N., Matsumoto, K., Inokuma, H., Furuoka, H. and Kobayashi, Y.
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Journal Title
Journal of Veterinary Medical Science
Volume: 77(2)
Pages: 147-154
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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