2014 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスの病原性発現におけるヘマグルチニン蛋白質の役割
Project/Area Number |
25450422
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 登喜子 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (60557479)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス / スペイン風邪 / 病原性 / レセプター特異性 / 飛沫伝播性 / 宿主因子 / ヘマグルチニン |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザは毎年冬になると流行し、多くの犠牲者を出す。また、数十年に一度起こるパンデミックや、鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染も、社会的に大きな問題となっている。本研究では、インフルエンザの病原性発現において、ウイルス表面糖蛋白質ヘマグルチニン(HA)が果たす役割を明らかにすることを目指す。 平成26年度は、1918年にパンデミックを起こしたスペイン風邪インフルエンザウイルスに類似の鳥インフルエンザウイルス(以下、スペイン風邪類似鳥ウイルス)のHAの性状解析を中心に研究を行った。 最近の研究から、スペイン風邪ウイルスに良く似た鳥インフルエンザウイルスが、いまだに野鳥間で流行している可能性が示唆された。そこで、スペイン風邪ウイルスに良く似た鳥ウイルス遺伝子を持つスペイン風邪類似鳥ウイルスを人工的に作出し、性状解析を行ったところ、本ウイルスの哺乳類動物モデルにおける病原性は、スペイン風邪ウイルスよりは低かったが、一般的な鳥インフルエンザウイルスよりも高いことが分かった。続いて、フェレットを用いて、スペイン風邪類似鳥ウイルスの飛沫伝播性試験を行ったところ、スペイン風邪類似鳥ウイルスは、一般的な鳥ウイルスと同様に、フェレット間で飛沫伝播しなかった。 これまでの研究から、HAは、ウイルスポリメラーゼとともに、宿主特異性を決める重要な因子であることが示されている。そこで、鳥ウイルスがヒトの細胞に感染しやすくなるアミノ酸変異を有するHAとウイルスポリメラーゼを持つスペイン風邪類似鳥ウイルスを作出し、本ウイルスの飛沫伝播性を調べたところ、フェレットにおいて限定的ではあるが飛沫伝播することが分かった。さらに分子生物学的な解析の結果、これらのアミノ酸変異によって、スペイン風邪類似鳥ウイルスがヒト型レセプターに結合しやすくなり、また、ヒトの細胞で増殖しやすくなっていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、インフルエンザウイルスの病原性発現におけるHA蛋白質の役割を明らかにすることを目的として、1)病原性の高いインフルエンザウイルスのHA蛋白質は、他のウイルス株のHA蛋白質と比べて、その機能活性に違いはあるか?、および、2)病原性の高いインフルエンザウイルスのHA蛋白質を導入した宿主(細胞および動物)では、どのような反応が起こっているのだろうか?の2点について、調べることを提案している。
1)については、平成26年度は、一般の鳥インフルエンザウイルスのHA、スペイン風邪類似鳥ウイルスのHA、および、飛沫伝播する変異スペイン風邪類似鳥ウイルスのHAについて、レセプター特異性および熱安定性の比較検討を行った。その結果、飛沫伝播する変異スペイン風邪類似鳥ウイルスのHAは、飛沫伝播しない鳥ウイルスと比べて、熱安定性が高く、またヒト型レセプターを良く認識した。以上の結果から、HAのレセプター特異性や熱安定性は、飛沫伝播性に影響を及ぼすことが示唆された。2)では、スペイン風邪ウイルスのHAと相互作用する宿主因子の同定を計画している。平成26年度は、スペイン風邪ウイルスと同じサブタイプのHAについて検討を行った。その結果、HA蛋白質と会合する351個の宿主因子を同定し、そのうち120個程度の宿主因子がインフルエンザウイルスの増殖に関わることが明らかとなった。以上の結果が得られたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、スペイン風邪ウイルスのHA蛋白質を宿主(細胞あるいはマウス)に導入した時に起こる宿主応答について調べる。スペイン風邪ウイルスと他のウイルス株のHA蛋白質を導入した細胞および動物における遺伝子発現パターンを比較検討することによって、スペイン風邪ウイルスのHA蛋白質が、他の株と比べて、より強い免疫応答を誘導するかどうかなど、ウイルス株間での宿主応答の違いを明らかにする。さらに、スペイン風邪ウイルスのHAと相互作用する宿主因子を同定し、また上記の遺伝子発現プロファイルの結果と併せて、スペイン風邪ウイルスの病原性に関わる可能性のある宿主因子の同定を目指す。
|
-
-
[Journal Article] Influenza virus-host interactome screen as a platform for antiviral drug development.2014
Author(s)
Watanabe T, Kawakami E, Shoemaker JE, Lopes TJ, Matsuoka Y, Tomita Y, Kozuka-Hata H, Gorai T, Kuwahara T, Takeda E, Nagata A, Takano R, Kiso M, Yamashita M, Sakai-Tagawa Y, Katsura H, Nonaka N, Fujii H, Fujii K, Sugita Y, Noda T, Goto H, Fukuyama S, Watanabe S, Neumann G, Oyama M, Kitano H, Kawaoka Y
-
Journal Title
Cell Host and Microbe
Volume: 16
Pages: 795-805
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
[Journal Article] Circulating avian influenza viruses closely related to the 1918 virus have pandemic potential.2014
Author(s)
Watanabe T, Zhong G, Russell CA, Nakajima N, Hatta M, Hanson A, McBride R, Burke DF, Takahashi K, Fukuyama S, Tomita Y, Maher EA, Watanabe S, Imai M, Neumann G, Hasegawa H, Paulson JC, Smith DJ, Kawaoka Y
-
Journal Title
Cell Host and Microbe
Volume: 15
Pages: 692-705
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-