2013 Fiscal Year Research-status Report
家族性てんかん犬のてんかん発生機序に関する分子病理学的研究
Project/Area Number |
25450424
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森田 剛仁 鳥取大学, 農学部, 教授 (70273901)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | てんかん |
Research Abstract |
特発性てんかんの原因は不明であるが、興奮性神経伝達物質の一つであるグルタミン酸との関連性についての報告が多数なされている。当教室で維持している特発性てんかん家系犬に関する検索により、本家系犬の大脳皮質脳溝深部におけるグルタミン酸トランスポーター(GLT-1)の陽性像の減弱が認められたことから、本家系犬のてんかんの原因の一つとしてGLT-1蛋白の発現低下が関連している可能性が示唆された。本研究では、本家系犬の大脳皮質脳溝深部のアストロサイトにおける GLT-1蛋白発現過程に着目し以下の検索を行った。①免疫組織化学:家系犬3例および対照犬2例の大脳ホルマリン固定材料および抗GLT-1抗体を用いた。②In situ hybridization:上記ホルマリン固定材料およびGLT-1mRNAに相補的なプローブ(DIG oligonucleotide 3’-end labelling kitで標識)を用いた。③免疫電顕:上記ホルマリン固定材料および抗GLT-1抗体(immunogoldで標識)を用いた。その結果、①家系犬の大脳皮質脳溝深部においてGLT-1陽性像の減弱を確認した。②In連続切片を用いた検索により、GLT-1陽性像低下領域のアストロサイトはGLT-1mRNA陽性であることが確認された。また、対照犬と家系犬に陽性像の差は認められなかった。③免疫電子顕微鏡学的検索:対照犬の大脳皮質脳溝深部のアストロサイトの小胞体膜上および細胞膜上にGLT-1陽性像が確認されたのに対し、家系犬のこの領域のアストロサイトにおいては、小胞体膜上に陽性像は確認されたものの、細胞膜上には陽性像は確認されなかった。家系犬の大脳皮質脳溝深部のGLT-1蛋白発現過程において、小胞体での蛋白合成までは正常に行われていることが確認された。今後、小胞体以降のGLT-1蛋白発現過程に絞り込んだ検索が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新鮮な材料の入手に苦慮した。脳波検査等、必要に応じててんかん焦点を電気生理学的に同定しつつ、解析をすすめるはずであったが、脳波記録装置の故障等も重なり、十分な電気生理学的検査ができなかった。一方、新鮮な材料がとれた場合を想定し、新鮮材料から、免疫電子顕微鏡的検索をどのように行えば、客観的なデータを入手可能か、判断できるところまでに至った。今年度は免疫電子顕微鏡的検索の手技的なところをほぼ完成させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は新鮮な材料を入手し(最低5例)、GLT-1蛋白の生成過程のどのプロセスに異常があるかという点に注目し、免疫電子顕微鏡的検索をさらに進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、てんかん家系犬の脳の十分な新鮮材料を入手し、免疫電子顕微鏡的検索を十分に検討することができなかった(予定の4割)。脳波検査装置の異常等がその理由である。平成26年度では、平成25年度に検討できなかった例数以上の検体をすすめるべく実験計画をたてて、すぐにできる状況にある。 平成25年度に生じた「次年度使用額」を平成26年度の研究遂行のために使用する予定である。詳細には、GLT-1免疫組織化学的検索および免疫電子顕微鏡的検索である。免疫電子顕微鏡的検索には、新しい文献情報をもとに抗原の賦活化の条件の検討を行いつつ、詳細に検討する必要である。平成26年度にGLT-1蛋白の生成過程のどこに異常があるか解明されることが十分に期待できる。
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