2014 Fiscal Year Research-status Report
家族性てんかん犬のてんかん発生機序に関する分子病理学的研究
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25450424
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森田 剛仁 鳥取大学, 農学部, 教授 (70273901)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | てんかん / 神経病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
てんかんは発作を繰り返す慢性の脳疾患である。加えて脳機能障害(記憶障害、嗅覚障害、うつの発生など)が生じることが知られ、これには発作により生じる神経細胞死が関連することが注目されている。しかし、神経細胞死の発生機序は詳しく解明されていない。本研究では、家族性てんかん家系犬の大脳皮質に認められる神経細胞死のメカニズムを解明する一助として、カイニン酸投与ラットを用い、視床に生じる神経細胞死の発生機序の解明を目的とした。特に、アストロサイトによるグルタミン酸取り込み機能の低下およびミクログリアの活性化に注目した解析を行った。【材料および方法】SDラット (雄、7週齢) にカイニン酸(10 mg/kg) を腹腔内投与して発作を誘発した。投与後5時間、1、2ならびに4週間に脳を採材し、組織学的検索(HE染色)ならびに免疫組織学的検索(Iba-1、GFAP、GLT-1およびグルタミン酸) を行った。【結果および考察】投与後4週間の視床(背内側核および結合核)に神経細胞死を認めた。連続切片を用いた免疫組織学的検索により、同領域に、GLT-1(アストロサイトによるグルタミン酸取り込みに重要な輸送体)陽性像の減弱、グルタミン酸陽性像の増強、アストロサイトのGFAP陽性像の減弱およびIba-1陽性ミクログリアの増加を認めた。また、投与後1、2ならびに4週間の同領域(神経細胞死無し)にモザイク状のGLT-1陽性像の減弱、アストロサイトのGFAP陽性像の減弱およびIba-1陽性ミクログリアの軽度増加を認めた。以上から、アストロサイトのグルタミン酸取り込み機能の低下およびミクログリアの活性化が、視床に生じる神経細胞死に先行して生じ、神経細胞死に関連すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
家族性てんかん家系犬のてんかん発生メカニズムに関して、てんかん家系犬および対照例の大脳の材料を使用した免疫電子顕微鏡的検索を実施している段階であるが、材料の固定および免疫反応の適切な条件を検討するところでとまっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度検討した「材料の固定および免疫反応の適切な条件」を考慮して、てんかん家系犬および対照例について、グルタミン酸トランスポーターの生成過程のどのこに異常が生じているかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
グルタミン酸トランスポーターに関する免疫電子顕微鏡的検索に必要な脳の固定条件、免疫反応条件を検討するところまで研究が実施できたが、そのために多くの時間を要したため、家系犬の脳を使用した免疫電子顕微鏡的検索を実施することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度検討した「グルタミン酸トランスポーターに関する免疫電子顕微鏡的検索に必要な脳の固定条件、免疫反応条件」をもとに、本年度は家系犬の脳を使用した免疫電子顕微鏡的検索を実施する予定である。
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