2013 Fiscal Year Research-status Report
ネオスポラ症における垂直感染阻止経口投与型ワクチンに関する研究
Project/Area Number |
25450432
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
池 和憲 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (50159597)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Neospora caninum / ネオスポラ症 / ワクチン / 経口投与 / アジュバント |
Research Abstract |
ネオスポラ症は細胞内寄生原虫Neospora caninumの感染に起因する届出伝染病である。本症に対するワクチンは、①水平感染に対しては細胞性免疫のTh1型免疫が、②垂直感染に対しては液性免疫のTh2型が有効である。本研究の目的は、この相反する連続した事象に対するワクチンおよびワクチンプログラムの開発、特に②の問題について、経口投与型のワクチンの可能性を提示することである。以下に平成25年度の研究の概要を記する。 (1) ワクチンプログラムの作出:平成27年度までの3年間で完結させる。 (2) Th1/Th2免疫の有効性のマウスにおける再確認:水平感染で[抗原(NcSRS2)+ゴーヤ由来β-グルカン+オイルアジュバント]にてTh1型免疫が、さらに垂直伝播マウスモデルでTh2型免疫が、有用な防御活性を有することを再確認した。 (3) マウス腸管粘膜接着因子としてのscFv型抗体の作出:マウス、ヒト正常脾臓細胞由来scFv抗体の作製を行い、マウス腸管粘膜細胞CMT/86/93細胞に対するヒト型scFv抗体のみが作製できた。 (4) scFvと原虫由来抗原との融合蛋白の作出:ヒト型scFv抗体遺伝子と原虫由来NcSAG1抗原遺伝子との融合遺伝子の作製を行った。さらに蛍光蛋白tdTomatoとの融合蛋白を作製し、マウス腸管粘膜細胞との付着性を蛍光顕微鏡下で確認した。 (5) 植物β-グルカンのDMSO処理化:β-グルカンを用いる検討で、キノコ由来のグルカンよりもゴーヤ由来のグルカンの方がTh1誘導性が高いことが分かった。 (6) ミドリムシにおける発現系の作出:光合成に関与する酵素蛋白Enolase遺伝子について5'UTR領域の1,814bpと3'UTRの912bpの解読を行い、蛍光蛋白であるtdTomato遺伝子を用いたミドリムシベクターの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度実績から、当初の計画から以下の点で若干の遅延を来している。 (3) マウス腸管粘膜接着因子としてのscFv型抗体の作出:ファージディズプレイ法を用いたマウス腸管粘膜接着因子としてのscFv型抗体の作出で、マウスよびヒト由来cDNAからマウス腸管粘膜接着因子を検討した。本来マウスをモデル動物として使用する予定であり、マウス型scFv抗体の作製を希望していたが、結果的にヒト型抗体のみの作製となった。今後マウス型抗体の作製を更に進めると同時にコレラ毒素等を代表とする粘膜接着因子の作製も目指すこととしたため、当初の研究計画より進行が若干遅れている。 (6) ミドリムシにおける発現系の作出ならびにワクチン化:経口投与型ワクチンを目指し、ミドリムシによる蛋白発現系の作出を試みている。これまでミドリムシによる蛋白発現系の作出の報告はないが、当初の計画では平成25年度にはベクターの作出とその遺伝子導入による検証までを行う予定であった。現在、基本的なベクターの構築は完了しているが、ミドリムシへの遺伝子導入法が確立できていないため、発現系の検証ができていない。そのため当初の予定よりも若干の遅延を来している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の様にして行う。 (1) ネオスポラ症ワクチンプログラムの作出:当初の予定通り、平成27年度までの3年間で完結させる予定である。(2) ネオスポラ症ワクチンとしてのTh1/Th2免疫の有効性のマウスにおける再確認:本年度に再確認は終了しており、予定通りの進行で確認は終了した。(3) ファージディズプレイ法を用いたマウス腸管粘膜接着因子としてのscFv型抗体の作出:マウス型scFv抗体の作製へさらにパンニングを進める。さらに将来の犬および牛に対するワクチンを考慮し、コレラトキシン、大腸菌由来易熱性トキシン、さらに浮腫病大腸菌由来志賀トキシンなどの腸管付着因子も検討課題として研究を遂行し、平成26年度中に抗原との融合蛋白を作製させる予定である。 (4) マウスscFvとネオスポラ原虫由来抗原との融合蛋白の作出:上記(3)の進捗状況に合わせ、融合蛋白を作製する予定にしている。さらに(6)でのミドリムシベクターへの応用も平成26年度内に行う予定である。(5) 植物β-グルカンのDMSO処理化:β-グルカンのDMSO処理化をキノコ由来β-グルカンで行う予定であったが、ゴーヤ由来β-グルカンの加熱抽出物でTh1型免疫が十分に誘導できるため、DMSO化を行わず、ゴーヤ由来β-グルカンの加熱抽出物を使用することとする。(6) ミドリムシにおける発現系の作出ならびにワクチン化:ミドリムシによる蛋白発現系は本研究中の主要な研究テーマである。本課題に関しては平成26年度中に遺伝子導入法の確立を早期に完了する予定である。さらに、ミドリムシでの研究の遅延に対して、緑藻のクラミドモナスを利用した経口投与型ワクチン開発も平行して行う計画を立てている。
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